国家レジリエンス研究推進センター

NR1

避難・緊急活動支援統合システム開発

異種情報統合→災害動態解析→迅速・的確な「災害対応」の支援へ

背景
災害はある一瞬の出来事だけではありません。自然と社会が相互に影響し合い、時々刻々と変化します。したがって、災害対応も、その変化に合わせて変えていくことが必要です。
研究内容
国民一人ひとりや様々な組織から得られる異なる種類の情報を統合し、時々刻々と変化する「災害動態」を捉えて時空間的に解析した情報プロダクツで、災害対応の意思決定を支援するシステムを構築します。
成果目標
災害対応システム同士が連動し、国民一人ひとりの緊急避難と避難所生活、それを支える政府の緊急活動(保健医療福祉支援、物資供給支援等)が、滞りなく迅速・的確に行われ続ける仕組みをめざします。
研究統括
臼田 裕一郎
コーディネーター
花島 誠人
参画研究機関
国立研究開発法人防災科学技術研究所(研究開発機関:研究責任者の所属機関)/ 株式会社日立製作所/ 株式会社ウェザーニューズ / 国立研究開発法人情報通信研究機構 / 株式会社構造計画研究所 / 日本アンテナ株式会社 / 産業技術大学院大学 / KDDI株式会社 /株式会社国際電気通信基礎技術研究所 / 沖電気工業株式会社 / 学校法人芝浦工業大学 / 国立大学法人東京工業大学 / 独立行政法人国立病院機構災害医療センター / 学校法人産業医科大学 / 日本赤十字社医療センター / 国立大学法人浜松医科大学 / 一般社団法人RCF

状況認識統一から意思決定支援へ

我が国では、地震・津波・火山噴火・気象災害等、国難的事態に至る大規模自然災害が確実に起こるという認識のもと、具体的な方策を確立することが喫緊の課題です。SIP第1期「レジリエントな防災・減災機能の強化」では、災害対応組織間での「状況認識統一」を目的に、府省連携により災害情報を多組織間で共有する「府省庁連携防災情報共有システム(SIP4D: Shared Information Platform for Disaster Management)」を開発しました。これを、平成28年熊本地震や平成29年7月九州北部豪雨、平成30年7月豪雨等において、政府や都道府県の現地災害対策本部等、災害対応の現場に適用し、その有効性が認められてきました。その結果、2019年度からは、内閣府主導の「災害時情報集約支援チーム(ISUT: Information Support Team)」が本格運用開始となり、SIP4Dは装い新たに「基盤的防災情報流通ネットワーク」として継続的に活用されることとなりました。 

一方、災害対応の行動・活動をより良いものにするには、「状況認識統一」からさらにもう一歩、踏み込んだ研究開発が必要です。災害に対し、「今、こういう状況にある」から「次に、こういう行動・活動をするべき」という情報を作り出すこと、すなわち、「状況認識統一」から「意思決定支援」を目的とした研究開発が求められていると考えています。そこで、災害時の国民一人ひとりの「避難」と政府の「緊急活動」の2つを対象に、「意思決定支援」を実現する「避難・緊急活動支援統合システムの研究開発」を開始しました。 

  • 避難所分布地図の例 図1 意思決定を支援する新しい避難所分布地図

自然現象×社会状況=災害動態

自然災害は時々刻々と「変化」します。そして、自然災害とは自然(地震、豪雨等のハザード)と社会(人、物、経済等)の掛け合わせで発生する現象です。しかし、前者と異なり、後者を把握する観測網は存在しません。さらに、災害対応で活用されている情報の多くは、ある一時点を切り取った静的な情報であり、その「変化」を表すことができていません。例えば、避難所の分布と避難者数を示した地図は災害時に多用されますが、緊急物資の支給、保健医療福祉等の専門家派遣等の活動には、どの避難所の避難者が増えているのか、減っているのか、その変化が急激なのか緩やかなのか、長期的なのか短期的なのか、といった「変化」の情報が必要になります。しかし、現在多用されている地図にはそのような情報は掲載されていません。これに対し、避難所ごとの避難者数の推移を把握できれば、図1に示すように、想定と異なる「変化」を示す避難所を他と異なる表現で示し、次に起こすべき行動の意思決定を促すことが可能となります。さらには、一人ひとりが持つ携帯電話・スマートフォンを活用すれば、よりリアルタイムかつ正確にその推移を把握するとともに、その人の置かれた状況に応じた情報を直接届けることができ、意思決定の速度をより上げることができるかもしれません。 

そこで、自然現象の「変化」の観測・予測に加え、様々な情報通信技術を駆使して社会の「変化」を把握する技術を開発し、これを融合した「災害動態」を扱うシステムを構築します。そして、災害動態を自動解析し、事態の勃発・異状・急変を検知し、推移を予測し、可視化することで、意思決定を支援する技術の実現をめざしています。 

  • 避難・緊急活動支援統合システムの全体像のモデル図 図2 避難・緊急活動支援統合システムの全体像

CPS4Dと3つのコア技術カテゴリ

第5期科学技術基本計画では、我が国がめざすべき未来社会の姿として「超スマート社会(Society 5.0)」が示されています。これを実現するのが、現実空間と仮想空間を高度に融合させた「CPS: Cyber-Physical System」です。私たちはこれを防災の分野で先行させたいと考えています。災害対応に必要な情報を共有する「SIP4D」を、災害対応を情報で牽引する「CPS4D: CPS for Disaster Resilience」に進化させ、イノベーションを起こすことが目標です。 

そのために必要となる3つのコア技術カテゴリがあります。現実空間で変化する災害動態を仮想空間上で再現する「デジタルツイン技術」、現実空間と仮想空間をつなぎ続ける「レジリエントネットワーク技術」、現実空間での行動・活動を仮想空間の情報で牽引する「フィードフォワード技術」です。これらを実現するために、17の研究所・大学・企業等で共同体を構成し、図2に示す10のサブテーマを設定しました。さらに、第2期SIPで取り組む7テーマと実在する各種システム群をつなぎ、社会を情報で連動させる仕組みづくりに取り組んでいます。 

2年目は4つのストーリーに焦点

2年目に当たる2019年度は、①国民一人ひとりへのインタラクティブ避難支援、②オール保健医療福祉の緊急活動支援、③官民協働による物資供給活動支援、④政府現地災害対策本部の意思決定支援の4つのストーリーにターゲットを絞って技術開発・社会実装を加速しています。これまで、災害対策本部や保健医療・物資供給の現場は一般の方が目にする機会はなかなかなく、研究開発の成果がその中でどう役立つのか、見えにくいものだったかもしれません。今回は、防災チャットボットなど、一人ひとり誰もが触れる技術を開発するとともに、これらが各機関の災害対応に直接結び付き、社会全体がつながり合って的確な災害対応を実現する姿を「実感」できる研究開発を行っていきます。 

国家レジリエンス研究推進センター 研究統括

臼田 裕一郎

うすだ・ゆういちろう
1973年長野県生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒、同大学院政策・メディア研究科修了、博士(政策・メディア)。大学院特別研究助手等を経て、2006 年入所。情報の利活用技術の研究開発に従事。現在、防災情報研究部門長、総合防災情報センター長等を兼務。2017年文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)受賞。SIP では第1 期に引き続き第2 期も研究責任者を務める。「社会に役立つ研究を、社会とともに」が身上。 

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