国家レジリエンス研究推進センター

NR3

広域経済早期復旧支援システム開発

巨大災害に対する経済被害を推定し、災害対応を強力に支援

背景
南海トラフ巨大地震は、広域に甚大な被害をもたらすと予想されています。このような災害に見舞われた場合においても、産業の早期復旧を果たし、経済的損失を最小限に抑える対応の策定が急務となっています。
研究内容
南海トラフ地震等の巨大災害が日本経済全体および各地域に与える影響を定量的に評価できる広域を概観した経済被害予測システムを開発し、経済的損失を最小限に抑えることをめざします。
成果目標
平時には企業のBCP策定や地域の災害対策計画に活用でき、発災時には、企業、政府や自治体等の災害対策本部が参照し、生産施設やライフラインの復旧手順の最適な判断を支援するシステムの開発と実装を行います。
研究統括
藤原 広行
コーディネーター
髙橋 郁夫
参画研究機関
国立大学法人名古屋大学(研究開発機関:研究責任者の所属機関)/ 国立研究開発法人防災科学技術研究所 / 国立大学法人京都大学

南海トラフ巨大地震が発生した場合

南海トラフ巨大地震は、大阪、名古屋の大都市圏を含む広域に甚大な被害をもたらすと予想されています。その被害規模は、これまでわが国が経験したことのない未曽有のものとなるとされ、平成25年の内閣府の被害想定では220兆円規模の経済被害、平成30年の土木学会の試算では、発生から20年間の経済被害総額が1410兆円と推定されています。まさに国難とも言うべきこの広域・巨大災害が発生した場合、復旧を担う人材や様々な資源(物資、資機材や施設など)が大幅に不足する事態が予想されます。しかし、その不足の早期解消のための戦略や、地域の早期復旧のために限られた資源をどこにどう投入すべきかといった最適化の戦略は、現状まだ明確にされていません。さらに、そのような戦略の検討過程において、大企業も含めた産業群全体の事業の早期再開の実現という視点での検討は不十分な状況です。

産官学協働による広域経済の減災・早期復旧戦略の立案手法開発

こうした現状を背景として、名古屋大学が中心となって、防災科研および京都大学が協力し、「産官学協働による広域経済の減災・早期復旧戦略の立案手法開発」が進められています。

本研究開発の全体の目的は、広域巨大災害に見舞われた場合においても、産業の早期復旧を果たし、経済的損失を最小限に抑えることができる対応計画策定のための仕組み・体制を構築すること、およびその枠組みを活用し、広域巨大災害時に顕在化する地域産業の復旧の障害となる様々な隘路(ボトルネック)を識別し、事前に解消可能性のあるものはそれを提案すること、さらに、地域の経済活動の実態を反映した被災シミュレーション・システムや、発災時には他者を意識した協力行動が必要との認識を地域のステークホルダーが共有することを容易にするツール/システムを開発し、平時には企業や地域のBCP訓練に活用するとともに、発災時には、政府の現地対策本部が参照し、社会基盤やライフラインの復旧手順の判断に活用しうるよう、それらシステムを実装することです。

  • 広域を概観した経済被害予測システムの概念を図示した様子 図1 広域を概観した経済被害予測システムの概念図

広域を概観した経済被害予測システム

防災科研では、特に、南海トラフ巨大地震等の巨大災害が日本経済全体および各地域に与える影響を定量評価する広域を概観した経済被害予測システムの開発を進めています。このため、防災科研がこれまで培ってきた地震や津波のハザード・リスク評価研究に関する知見を基盤として、南海トラフ巨大地震の広域経済被害予測を可能とするための曝露データの整備、曝露対象物の直接・間接的被災に起因する経済被害の予測手法を開発しています。

具体的には、①地震動や津波浸水深等の想定ハザードと対応させ、生産設備やインフラ・ライフライン等の曝露データを広域で整備し、②ハザードがそれら曝露対象物に与える影響の度合い(機能的支障を含む)を評価する手法を構築、③最新の経済学的知見に基づき、地域を超えた産業連関、家計や企業の行動原則、経済全体の収支を適切に考慮した経済モデルを開発、という手順で取り組みを進めています。経済モデルの開発においては、発災直後のみならず、その後の復旧・復興まで含めた経済活動のシミュレーションを可能とすることをめざしています。こうして、南海トラフで発生する可能性のある多様な地震による経済被害を試算し、広域を概観した経済被害波及シナリオの研究を行っています。

その上で、開発した予測手法を組み込んだ広域を概観した経済被害予測のための直接・間接経済被害予測システムの開発を実施しています。具体的には試算した多数の経済被害シミュレーション結果や被害シナリオをデータベース化し、シナリオごとに経済被害を概観できる可視化システムを構築します。また、多様な被害シナリオを的確に検索する機能を開発し、事前対策の効果算定や、地域や企業等のBCP・訓練を支援するため、二次利用可能な形式での情報共有をめざしています。さらに、広域経済早期復旧支援のため、既存のSIPリアルタイム被害推定・状況把握システムの被害に関する情報を取り込み、地震発生直後から広域での経済被害をモニタリング可能とし、将来の経済被害動態情報等を取り込んだリアルタイムデータ同化による高精度な被害予測に向けた研究開発を行う予定です。

国家レジリエンス研究推進センター 研究統括

藤原 広行

ふじわら・ひろゆき
京都大学大学院理学研究科中退、博士(理学)。1989 年国立防災科学技術センター(現:防災科学技術研究所)入所。強震観測網の整備、全国地震動予測地図の作成、統合化地下構造データベースの開発、災害リスク情報プラットフォームの開発、リアルタイム地震被害推定システムの開発等に従事。2018 年研究統括に就任。マルチハザードリスク評価研究部門長。

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