令和6年能登半島地震 雪氷災害関連情報
防災科研雪氷防災研究センター調査報告(速報)
能登半島地震と雪氷災害の複合災害として想定される注意点
現地の状況を踏まえ、複合災害として想定される注意点をまとめました。
- 地震で弱った建物に多量の雪が積もると、雪の重みで建物の倒壊の恐れが高まる。また、屋根雪により建物の重心が高くなるため、余震により揺れやすくなる可能性がある。さらに、多量降雪後に雨が降ると、積雪の中に雨の水分が溜まって重くなり、建物被害の危険性が高くなる。
- 液状化による隆起や沈下により道路の段差や起伏が大きくなっており、機械除雪がスムーズに行われず、時間がかかる可能性がある。
- 降雪により、地盤の傷みや亀裂が隠れてしまい、車の通行や歩行者の移動に支障が出る。
- 0℃前後の降雪では電線への着雪が生じやすく、傾いた電柱がさらに傾き、電線の接触や切断による停電や通信障害が拡大する可能性がある。
- 能登地方では昨年12月に大雪による倒木で停電が多数発生したが、今後も降雪時には樹木への冠雪による倒木が原因の停電のリスクが高まる。
- 北陸地方に多数設置されている消雪パイプが地震によって機能が発揮されないこともありうる。
- 道路の段差などが雪で見えなくなる。車の運転はより慎重にスピードは控えめにする。
- 地震被害にあった屋根の雨漏りの応急対策のためにブルーシートが用いられるが、ブルーシートの上に積もった雪は大変滑りやすく、落雪による被害が想定される。屋根の下を歩行する場合は、足元だけなく、上方にも注意して行動することが必要である。また、落雪の可能性のある場所にはロープを張るなどの歩行者への注意喚起も必要である。
- 車のマフラー(排気口)が雪に埋まった状態でエンジンをかけていると、排気ガスが車体の隙間や外気導入口から車内へ流入し一酸化炭素中毒の危険性がある。車中泊をする場合には、降雪に注意し、スコップなどでマフラーの周りを除雪することが必要となる。
- 能登地方で多発している土砂災害発生箇所では、斜面の積雪を支えて雪崩を抑止する効果をもつ樹木が無くなっているところも多く、雪崩の危険性が増す。
- 土砂災害発生箇所では、土砂自体の強度が低下しているうえに、融雪による水分供給も加わり、土砂と雪が崩れる現象など土砂災害の拡大も懸念される。
被災地には救助や支援、復旧で雪に慣れていない方の出入りも多くなるため、上記の雪に対する啓発を継続してください。
さらなる土砂災害や雪崩に注意
土砂崩れ・がけ崩れが発生した場所では、樹木が無くなり地表が露出します。このため、地表面の支持力が低下し、雪崩が発生しやすくなります。また、雪崩防止柵の損壊または柵に土砂や樹木が堆積し、防止柵本来の予防機能が低下し、今まで安全だった場所も雪崩の危険が高まっています。
震災時に発生した地盤の亀裂へ降水や融雪の水が浸透し、土砂崩れ・地滑りといった土砂災害が発生しやすくなっていることにも注意をしてください。
屋根雪に注意
震災で破損した屋根を補修するためにブルーシートを用います。ブルーシートは表面がなめらかで、通常の屋根に比べると雪が落下しやすくなります。
大雪が降った後は、屋根からの落雪には一層の注意が必要です。
中越地震後の大雪で発生した関連災害の報告書
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- 地震と大雪の複合災害(Yahoo!ニュース・上石研究員が執筆)