「レジリエンス」を社会に

最も大切なのは、
一人ひとりの自助力を上げること

21 世紀前半に予想される南海トラフ巨大地震などの国難災害、その国家的な危機を乗り越えるために、この国の防災はどうあるべきでしょうか。残念ながら、ハザード(自然現象)そのものは制御することができません。しかし、その振る舞いを予測することも、防災力を向上させることも可能です。大切なのは、それらをバラバラに行うのではなく、災害をしなやかに乗り切る力「レジリエンス」という概念のもと、総合的に進めていくことです。 

防災科学技術研究所(以下、防災科研)は、「防災科学技術を向上させることで災害に強い社会を実現する」という基本目標のもと、幅広い研究を推進しています。ここでいう防災科学技術とは、何が起きるかをしっかり理解して予測し、災害を未然に防止し、被害の拡大を食い止め、災害からの復旧・復興を実現する科学技術を指します。防災科学技術の全体像を防災科研の取り組みとして整理したものが下記の図になります。 

防災科学技術は、災害未然防止、被害拡大防止、災害復旧支援の3点からなりたっております。それぞれ災害予測や災害対応・避難といった共通的な研究開発を実施し、観測、実験を繰り返しながらシミュレーションを行い、情報による知の統合によって、ステークホルダーとの連携を行っています。

防災で最も大切なのは、一人ひとりの自助力を上げることだと私は考えています。災害に対して正しい認識を持った上で、必要な備えをしておくこと、万が一災害が起きても、めげずに苦境を乗り越えていく力を持っておくことが大切なのです。政府や自治体を中心とした公助には限界があるので、顔見知りが助け合う互助、見知らぬ者同士も助け合う共助も考えていかなければなりません。共助の中でも、防災科研が特に注目しているのが企業の力です。物流やエネルギーなどの企業の事業継続性が高まれば地域も強くなります。そうした企業のレジリエンスを助ける仕組みづくりも防災科研の取り組みの一つです。 

防災科研は、「防災科学技術研究におけるイノベーションの中核的機関の形成」を目標に掲げ、第4 期中長期計画を2016 年にスタートさせています。その直後に熊本地震が発生し、防災科研の研究成果は現場での災害対応や復旧・復興に活用されることとなりました。その後の活動も含めて、防災科研の姿勢や存在は、広く認識されてきたと感じております。 

持続可能な開発のための2030 アジェンダ「SDGs」を表した図です。

わが国の持続可能性を揺るがす最大の脅威は自然災害だと考えます。国連では、2015 年に持続可能な開発のための2030 アジェンダ「SDGs」が採択されています。防災科学技術の向上はSDGs の大前提とも言えるのではないでしょうか。 

防災科研では2018 年から、研究所の在り方を見直すべくブランディング活動を始めました。所員が一丸となり、議論をしてきた中で大切にしたのは、「一人ひとりが防災の主役である」という認識です。そうした環境を防災科研がつくっていくという思いが、「生きる、を支える科学技術」というタグラインに込められています。 

このアイデンティティのもと、防災科研はその成果の社会実装までをスコープに入れ、社会が求めている研究開発に取り組んでいきます。そして、さまざまな分野の人々と協力し合いながら、「一秒でも早い予測、一分でも早い避難、一日でも早い回復」を実現し、持続可能な社会への道筋を描いていきます。 

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