震災対策特別研究
首都圏南部における地震活動に関する研究
[背景](研究の必要性)
我が国の政治・経済活動の中枢である首都圏地域は,江戸時代以来,相模トラフ周辺海域で発生するM8級の海溝型地震と,陸域で発生するM7級の直下型地震により繰り返し被害を被っており,将来も発生が予測される「観測強化地域」に指定されている。そのため,本地域の地震の調査研究を進め,災害の軽減を図ることは緊急の課題である。本研究は,陸域では首都圏特有の高いノイズレベルを克服するため,深層観測井等の高感度地殻活動観測網を,また従来観測空白域であった相模トラフ周辺海域では,ケ-ブル式海底地震観測施設をそれぞれ整備し,本地域の地震活動等の検知能力を飛躍的に向上させた。またそれらから得られたデ-タの解析研究により,本地域の地震活動状況やプレ-ト構造等の解明に多くの成果をあげてきた。本研究はこれらの実績を踏まえて,地震調査推進本部が策定した「総合的かつ基本的な施策」に示す項目を具体化するため,上記の観測を良好な状態で維持,継続するとともに,得られたデ-タの解析研究によって,地震発生場,地震発生機構,プレ-ト構造,地殻構造の解明や前兆現象の検出等の基礎的な調査研究を進め,本地域の地震予知の推進や地震災害の軽減に資するものである。
[計画年度]
昭和44年度~
[実施内容]
この課題は,以下の4つの研究により構成される。
(1)深層地殻活動観測網による首都圏南部の地殻活動の観測研究
深層4観測施設における観測を良好な状態で継続し,デ-タに基づく震源分布,震源過程,発震機構,地震活動様式等,首都圏地域の地震調査研究を指向した調査研究を行うとともに,観測結果を地震調査研究推進本部等へ報告する。得られたデ-タは気象庁に伝送され,地震監視業務に用いられる。
(2)深層観測の性能向上と観測網強化に関する研究
深層4観測施設の観測性能を維持するために必要な整備,更新,改良を進めるとともに,観測網の性能を向上させるために必要な研究を行う。
(3)関東地方の地殻構造に関する研究
関東地方の地殻構造を解明して,精密な速度構造を求めることにより,震源決定精度を向上させる。また,関東平野の堆積盆の構造を明らかにすることにより,地盤振動性状の研究や潜在活断層の発見に資する。
(4)ケ-ブル式海底地震観測による研究
ケ-ブル式海底地震観測施設による観測を良好な状態で継続し,デ-タに基づき精密震源決定等を行い,相模トラフ海域の地震テクトニク弾性波速度構造の研究を進める。また,津波計のデ-タ解析により,津波伝播様式の研究を行う。
[成果の取扱]
- 本プロジェクトによる成果は,関連分野の学会,雑誌などに発表される他,地震調査委員会,東海地震判定会,地震予知連絡会などに定期的に報告される。
- 観測デ-タは,気象庁にオンラインで伝送され,地震監視業務に用いられる。
- 処理解析を施した観測デ-タ(例えば,震源マップなど)は,インタ-ネットを介して流布され,関連研究者に利用される他,一般国民からの広範な参照を受けている。
- 観測井掘削によって得られた地質デ-タ,検層デ-タなどは,資料集として出版し,関連研究者に広く用いられている。
- 本プロジェクトによって開発された,孔井式地震観測システムや光ケ-ブル式海底地震観測システムの技術は,他機関の陸上地震観測点や海底地震観測点の建設に広く用いられている。