首都圏南部における地震活動に関する研究

評価の視点 評価結果
[研究目的と目標]
問題意識の明確さ
研究目標の妥当性
研究課題の独創性
問題意識は明確であり、サブテーマ2と4は特に明確である。研究目標の妥当性については全体としてやや明確な程度だが、サブテーマ2と4はかなり明確である。一方、サブテーマ3は普通である。
全体としては、今後の研究目標が問題であろう。「関東・東海地域における地殻活動に関する研究」と統合すべきとの意見があった。
課題の独創性は全体としてやや高い程度であるが、研究に着手した時点での独創性は高かったとの評価がある。サブテーマ2と4はかなり明確だが、サブテーマ3は普通である。 
[社会的背景]
必要性及び緊急性
国の研究計画との関連
独法人が実施する意義
社会的な必要性及び緊急性は全体として高い。サブテーマ1は特に高く、人口や経済等首都圏に一局集中する中で、防災科研が深層井戸によって長期に観測を続けた意義は高い。サブテーマ3はやや高い程度である。
国の試験研究機関として実施することの意義は全体としてかなり高い。中でもサブテーマ2の意義は高い。このような課題は防災科研のような機関でなければ遂行することができない。
一方、サブテーマ3はやや高い程度である。サブテーマ3の意義は高いが、どのように成果が利用されるか、科学技術庁が推進している「平野部での強震動予測」との関連が明確でないとの意見があった。 
[研究構成と内容]
サブテーマ設定の妥当性
アプローチの妥当性
研究ポテンシャル
サブテーマ2については設定の妥当性が特に明確で、アプローチの妥当性、研究内容の妥当性ともに明確で、研究ポテンシャルは高い。
次に、サブテーマ1についてはアプローチの妥当性が明確で、テーマ設定と研究内容との妥当性はかなり明確、研究ポテンシャルもかなり高い。
また、サブテーマ4についてはテーマ設定、アプローチ、研究内容、それぞれの妥当性はかなり明確で、研究ポテンシャルはかなり高い。これらのサブテーマによって良質のデータが得られていることについては、高く評価されている。ただし、これらのデータを地震の短期予知とむすびつけることは困難との意見があった。
サブテーマ3のテーマ設定とアプローチとの妥当性は、ともにやや明確な程度、研究内容の妥当性と研究ポテンシャルとは、ともに普通程度である。どこまでの解像度を持つモデル化を目指すのかが問題、他のサブテーマとの関係の強化が必要、大学等の研究者との共同研究を進めるべき等の意見があった。
[研究計画と予算]
年次計画の妥当性
資金規模の妥当性
研究スケジュール設定の妥当性は全体として普通であると考えられるが、かなり明確であるとの意見、やや不明確との意見もある。資金規模は適当である。 
[研究実施体制]
実施体制の妥当性
実施する組織構成および人員配置に関しては、適当と思われるが、一部に研究スタッフが不足との意見があった。
また、一般的に言えることだが、研究支援技術者が必要である。 
[期待される効果]
期待される効果
成果の反映方法
関連分野への波及効果
研究全体の目標と進捗度は計画どおりであり、サブテーマ1,2の成果と達成度は、ほぼ達成しているものの、サブテーマ3,4は一部達成に止まっている。
研究成果の活用・反映方法はやや明確、期待される効果はやや高い程度である。
サブテーマ3については、K-netの研究グループと関係が不明である、K-netの研究グループと統合してはどうか、地震動災害の軽減にどれだけ役立っているか不明である、等の意見があった。
サブテーマ4では有用なデータが得られているが、これを活用した研究については今後に期待したい。
津波観測については気象庁へデータ提供されているかどうか不明、されていないならするべきではないか、等の意見があった。 
[その他] この課題によって精度の高い地震データが得られるようになったことについては、全員が高く評価している。しかし、これらのデータを用いた地震予知や地震災害軽減等の研究が不十分であり、具体的な目標とそれを達成する手順を今後十分に議論する必要がある。ただし、成果の一部は「関東・東海地域における地殻活動に関する研究」の成果に含まれているのかもしれない。
深層観測のための掘削は費用が嵩むが、地球科学の様々な研究にも大変有用であるので、大学等の研究者の知恵を結集して計画を十分に練ってから進めるべきである。なお深層観測の精度向上は、メンテナンスコストの削減を実現し、他の課題等の研究促進に役立つので進めるべきとの意見があった。

[総合評価]

  • A:課題として今後も推進すべきである
  • B:一部修正して実行すべきである
  • C:再検討すべきである
コメント サブテーマ2,4については、課題として今後も進めるべきとの意見が半数近くあった。
防災科研としては、定常観測をどのように研究所として位置づけるのか、明らかにしてほしい。理想的には、観測を開始して例えば10年経過した時点で、継続するのか、他機関(例えば地震観測を維持する法人等も考えられる)へ移管するのか、検討を行うべきである。これは特に、サブテーマ1にあてはまることだが、サブテーマ4についても、将来検討が必要となる。ただし、研究者が観測現場の身近にいることも重要で、全く観測を切り離してしまうことは問題である。
防災科研が深層観測など首都圏で非常に重要な観測をおこなっていることは、一般市民に知られていない。大多数は気象庁が行っていると思っている。十分に広報する必要がある。
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