関東・東海地域における地殻活動に関する研究
- サブテーマ1 関東・東海地殻活動観測網による地震調査研究
- サブテーマ2 地殻活動解析システムの開発研究
- サブテーマ3 地殻活動観測網の能力維持および性能向上に関する研究
- サブテーマ4 GPSによる広域地殻変動の研究
評価委員会委員長氏名:島崎邦彦 作成年月日:平成12年3月24日
評価の視点 | 評価結果 |
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[研究目的と目標] 問題意識の明確さ 研究目標の妥当性 研究課題の独創性 |
問題意識と研究目標の妥当性とは、いずれもかなり明確である。関東・東海という重要な地域に各種観測を集中するのは意義深い。なかでもサブテーマ1~3は 明確である。地震活動とそれに関連した構造とを、様々な手法を用いて解析する研究課題として、良くできている。20年あまりの均質なデータの蓄積の上に、東海地域の地震活動を監視する試みは意義が高い。 サブテーマ4の研究目標の妥当性は、やや明確である程度。かつては先進性のある優れたサブテーマであったが、国土地理院のGPSネットワーク設置後、目標の明確性はやや薄れた。また地殻変動連続観測網と分離しているように見える。 課題の独創性は全体としてかなり高いと言えるが、それぞれのサブテーマに関しては、やや高い程度である。 |
[社会的背景] 必要性及び緊急性 国の研究計画との関連 独法人が実施する意義 |
社会的な必要性及び緊急性は高く、国の試験研究機関として実施することの意義はかなり高い。この課題の成果として提出されたモデルが、東海地震の監視に用いられている点は、社会的な影響が大きいことを示している。また今回、静穏化現象を明らかにしたことは重要である。このように東海地震予知に関連した研究で重要な役割を果たしており、さらに主導的な役割を果して欲しい。 静岡西部のヒンジラインの観測も期待できる。サブテーマ4の必要性及び緊急性と、国の試験研究機関として実施することの意義とは、いずれもやや高い程度である。国土地理院とは独自に実施することについては、必ずしも十分には理解されていない。 |
[研究構成と内容] サブテーマ設定の妥当性 アプローチの妥当性 研究ポテンシャル |
これらそれぞれについてサブテーマ1~3は、かなり高い。 サブテーマ4については、サブテーマ設定の妥当性と研究ポテンシャルがやや高く、アプローチの妥当性と研究内容の妥当性は普通と評価された。上記のように、独自に実施することに疑問を持つ声もあるが、ソフトウェア開発で成果をあげる可能性は残されており、重要であるとの評価もある。ただし、多数の参加者 を集めた十分な共同研究が必要であるとの指摘があった。 |
[研究計画と予算] 年次計画の妥当性 資金規模の妥当性 |
研究スケジュール設定の妥当性は普通で、資金規模は余裕がある。 なお、関東・東海地域における様々な研究成果を統合したモデル作成を、スケジュールに組み込むべきである。 |
[研究実施体制] 実施体制の妥当性 |
実施する組織構成および人員配置に関しては全体として適当と考えられるが、実質的に研究に携わっている人数が不明で判断できないとの意見もあった。 膨大なデータに対し人員が少なすぎる、他機関・大学との共同研究を発展されるべきとの意見がある一方、他の課題に比べて人員配置に余裕がある、他課題へ人員をまわすべきであるとの意見があり、評価が分かれた。 |
[期待される効果] 期待される効果 成果の反映方法 関連分野への波及効果 |
研究全体の目標と進捗度はほぼ達成している。 サブテーマ1~3の成果と達成度は一部達成しており、サブテーマ4は達成していないものがある。 研究成果の活用・反映方法はかなり明確であり、期待される効果も高い。 サブテーマ1~3の成果はHI-net構築へ技術的に大きく貢献している。 |
[その他] | 関東・東海地域における様々な研究成果があがっているが、それらを統合化すべきである。「防災科研モデル」、すなわち、統合されたテクトニクス、地震活動、地下構造等の標準モデルを作成することが重要である。このようなモデルがあれば、それを基準としてさらに精密な調査・研究を行うことが可能となり、より発展した理解へ進むことが期待できる。 |
[総合評価]
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コメント | サブテーマ1~3はほぼ推進すべきであり、サブテーマ4に関しては一部再検討すべきである。サブテーマ4の現状は、やや中途半端と考えられる。縮小するか、或いは、日本のオリジナルのGPS解析ソフトウェアの構築を目指すくらいの意気込みを持って、スタッフを充実して取り組むか、判断が迫られている。 「首都圏南部における地震活動に関する研究」でも述べたが、防災科研としては、定常観測をどのように研究所として位置づけるのか、明らかにしてほしい。理想的には、観測を開始して例えば10年経過した時点で、継続するのか、他機関(例えば地震観測を維持する法人等も考えられる)へ移管するのか、検討を行 うべきである。その際には、「首都圏南部における地震活動に関する研究」と本課題とを統合することも考えられる。防災科研、気象庁、大学の三者が同じ地域 で定常観測を行っている現状は無駄である。ただし、研究者が観測現場の身近にいることも重要で、全く観測を切り離してしまうことには問題がある。 HI-netでは最新の技術で地震観測網が作られているが、関東・東海地震観測網の計測システムは古い技術で作られたものが更新されていないと聞いた。過去の地震活動との比較も可能な解析法を工夫する等して、最新の技術を用いた機器に、観測機器を更新すべきであろう。 |