お知らせ
国立研究開発法人防災科学技術研究所
ISO24057「地盤工学-微動アレイ探査によるせん断波速度構造の推定」に関する国際標準(International Standard)の取得について
このたび、国立研究開発法人 防災科学技術研究所マルチハザード評価研究部門の先名重樹主幹研究員が、ISO/TC182(WG9)のコンビーナ兼プロジェクトリーダーとして進めてまいりました「地盤工学-微動アレイ探査によるせん断波速度構造の評価(Geotechnics - Array measurement of microtremors to estimate shear wave velocity profile)」に関する国際規格が承認され、ISO 24057シリーズとして発行されることとなりました。
本規格は、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」において検討されてきた、リアルタイム地震被害推定に用いる浅部・深部統合地盤構造モデルの構築に必要となる地盤情報の有効な推定手段である、微動アレイ探査およびその解析手法について標準化したものです。また、経済産業省の戦略的国際標準化加速事業に公益社団法人 地盤工学会(会長:古関 潤一)と共同提案し、本事業の支援を受けて国際標準化を推進してきました。
今回、国際標準化された微動アレイ探査による地盤構造の推定技術は、従来、ボーリング調査のような大掛かりな装備や多くの人手や時間が必要だったものを、高性能な地震計を複数台設置して常時微動(人間が感じない微小な地面の揺れ)を観測して分析することにより、十分な精度で地盤構造(せん断波速度構造)を評価することが出来る手法です。この技術によって得られる高精度な地盤構造モデルを活用することにより、国内外の建造物やインフラ施設の構造安全性が格段に向上することが期待されます。
今後は、国際展開を中心とした本規格の運用を行いつつ、物理探査分野における種々の優れた地盤評価技術の国際標準化を進め、それらの技術を駆使した広域の地盤構造の総合的な評価方法に発展させる予定です。
用語説明
- 微動アレイ探査
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常時微動を複数の高性能の地震計で観測することにより、地下のせん断波(S波)速度構造を推定する新しい探査技術です。地震波は、震源から地表に到達するまでに、地盤が軟らかいか硬いかの状態によって増幅の程度が大きく変動する。その増幅の程度は、地盤のせん断波(S波)速度を調べることで分かる。
- せん断波(S波)速度構造
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せん断波(S波)は地震波の主要動をなす横波の事である。地盤震動の中でも、もっとも重要な物性値であり、そのせん断波(S波)が伝わる地盤の速度構造のことをせん断波(S波)速度構造という。
- 公益社団法人 地盤工学会
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日本の地盤工学を担う専門家が集まる公益社団法人の学会。所在地は、東京都文京区千石4丁目38番2号。将来の地盤工学の技術・学問分野の発展、展開を考え、学術技術の進歩へ貢献するための活動を行っている。本学会では、日本工業標準調査会(JISC)から、地盤調査とそれに対応した室内試験方法の基準化活動を委託されており、ISO規格の国内審議団体として規格・基準を提案している。今回国際標準化されたISO24057は、本学会の、ISO国内委員会(委員長:豊田浩史)、TC182国内専門委員会(委員長:木幡行宏)および、TC182国内専門委員会WG(リーダー:宮田喜壽)において審議された。