受賞一覧
2025年度日本雪氷学会技術賞を受賞しました
雪氷防災研究センターの佐藤研吾主任研究員が、2025年度日本雪氷学会技術賞を受賞しました。
日本雪氷学会技術賞は、雪氷技術の発展に貴重な貢献となる研究または開発を行った個人あるいは団体に贈られる賞です。佐藤研吾主任研究員が取り組んできた、着雪実験技術の開発とそれらの着雪対策への応用が、着雪研究の発展と社会実装に多大な貢献を果たしてきたとして評価されたものです。
授章式は2025年9月9日の雪氷研究大会(2025・津)で行われました。

受賞件名
- 着雪実験技術の開発とそれらの着雪対策への応用
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受賞概要
佐藤研吾氏はこれまで一貫して、着雪現象の発生メカニズム解明および着雪災害対策に資する技術開発に取り組んできた。乾雪内への温風の強制通風により−10 ℃の乾雪から含水率1〜3%の湿雪を10分程度の短時間で作成する装置や、格子状の金網を回転させて降雪供給を自動化する装置を開発して低温風洞装置における着雪実験の効率化・自動化に成功し、従来の手動降雪では困難な再現性の高い着雪実験手法を確立した。また着雪性状が気温だけでなく相対湿度に強く影響されることに着目し、上述の装置を活用した風洞実験により湿度が着雪の表面形状や硬度に与える影響を定量的に評価した。その成果は、自然条件に近い着雪実験条件の提案など、実験手法に新たな視点をもたらした。
さらに佐藤氏は、着雪実験を核とした共同研究を多数推進し、国内における着雪研究の共創推進にも大きく貢献してきた。これらの成果を基盤として、信号機器や電力インフラ等の関係機関とも協力した産官学連携体制のもと、着雪実験手法に関する検討委員会の構築に寄与した。そして雪氷研究大会特別セッションでの議論を通じて、実験で再現される着雪現象の妥当性の明確化や、着雪対策品の性能評価時の基準となる実験手法や条件の提案など、着雪実験の標準化に向けて重要な役割を果たしてきた。
また、着雪災害対応手法の高度化にも力を注いでおり、佐藤氏は実験や観測データに基づく着雪予測モデルを構築した。これは建築・道路構造物の着雪対策に取り組む民間企業を対象に、予測技術の社会実装を目指して試験運用されている。また他機関のものも含めて各種着雪予測アルゴリズムの高度化に前段で述べた共同実験の成果が活用されるなど、モデル面での貢献も大きい.さらに、近年自動運転の分野で注目されている自動車用ミリ波レーダの着雪障害について、実験的に雪の厚さや含水率を制御しながら受信信号強度の減衰量を測定し、着雪がレーダ検出性能に与える影響を定量的に示した。これは安全運転支援技術の開発に資する成果である。
このように佐藤氏は着雪現象解明から実験装置と手法の開発、標準化推進、応用まで多岐にわたって着雪研究の発展と社会実装に多大な貢献を果たしてきた。これらの成果は雪氷学分野に大きく貢献するものであり、技術賞に値する。
(2025年度学会賞受賞者の選考結果について、雪氷87巻4号(2025)より)
受賞コメント
このたびは栄誉ある賞を賜り、誠にありがとうございます。共同研究者の皆様、指導いただいた大学の先生方、雪氷防災研究センターの研究者、技術スタッフの皆様に深く感謝申し上げます。
今後も様々な研究者や企業、自治体の方と連携し、研究活動に邁進していきたいと思います。