国際イベント
【開催報告】日ASEAN地盤に関する複合災害ワークショップをつくばで開催
防災科学技術研究所(NIED)は、フィリピン科学技術省(DOST)およびASEAN科学技術イノベーション防災・気候レジリエンスプラットフォーム(ASPDCR)の関係機関と連携し、2026年3月30日と31日の両日、つくば市において「日ASEAN地盤に関する複合災害ワークショップ」を開催しました。
本ワークショップには、ASEAN加盟11か国からの25名を含む計59名が参加し、ASEAN各国および日本の政府機関、研究機関、民間企業の関係者が一堂に会しました。本ワークショップは、「Intervation Sessionシリーズ」の一環として実施されたものであり、「Interacting for Innovation(相互作用によるイノベーション)」の考え方のもと、科学的知見を実践的な防災・減災(DRRM)に統合することを目的としています。
日ASEAN協力による複合地盤災害への対応
ASEAN各国と日本は、降雨、地震、火山活動などが相互に影響し合う複合地盤災害という共通の課題に直面しています。これらの災害は、地域の地形・地質・気象条件と密接に関係しており、複数の要因が重なり合うことで被害が拡大する特徴があります。
本ワークショップでは、地盤災害の物理過程や観測・シミュレーション、リスク評価、早期警戒システムに至るまで、科学から実務への展開を視野に入れた幅広い議論が行われ、科学技術イノベーション(STI)を基盤とした日ASEAN協力の強化が図られました。
開会挨拶および主要メッセージ
開会にあたり、防災科学技術研究所の寶馨理事長は、ASEANおよび日本が共通して抱える災害リスクや、それを生み出す地形・地質・気象条件の類似性を示し、科学技術イノベーションの活用による防災対策の強化の重要性について述べました。また、産学官連携の推進や若手人材の参画の重要性にも言及しました。
フィリピン科学技術省 副大臣で同国のCOSTI(科学技術イノベーション)委員会議長のDr. Leah J. Buendiaは、本ワークショップがIntervationの枠組みの下で日ASEAN協力を一層強化する重要な機会であることを述べるとともに、両地域における複合災害への対応に関する経験の共有の重要性を強調しました。
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- 防災科研 寶馨理事長の歓迎挨拶
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- ASEAN COSTI議長・フィリピン科学技術省副大臣 Dr. Leah J. Buendiaによる開会挨拶
また、日本の文部科学省の大慈弥麻里防災科学技術調整官およびASEAN事務局のDr. Zurina Moktar ASEAN事務局科学技術課長からもメッセージが述べられ、防災分野における地域連携の重要性が改めて確認されました。
続いて、「Geohazards in ASEAN countries and Japan」と題した深田地質研究所顧問・京都大学名誉教授の千木良雅弘氏による基調講演が行われ、東南アジアおよび東アジア地域においては、地震や豪雨に起因する地盤災害が発生しやすい傾向が示されました。
テクニカルセッション
本ワークショップでは、発表およびパネルディスカッションからなる4つのテクニカルセッションが実施されました。各セッションでは、地盤災害の物理過程と発生メカニズム、観測システムおよびシミュレーション、マルチハザード・リスク評価手法、ならびに早期警戒システムを通じた社会実装について議論が行われました。
これらのセッションには、国際的な専門家と防災科研の研究者が参加し、それぞれの分野における知見や事例が共有されました。
民間企業の参画と知見交流
民間企業による防災ソリューションの紹介(Disaster and Climate Resilience Solution Showcase)では、防災・減災に関連する技術や取り組みが紹介されました。
また、World Café(ポスターセッション)では、政府、研究機関、民間企業の参加者による発表と活発な意見交換が行われ、研究成果や技術の共有とともに、参加者間の相互理解と連携の促進が図られました。
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- 専門家によるパネルディスカッション
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- World Caféでのポスター発表と質疑応答
主な成果
第2日目のグループディスカッションでは、防災・気候レジリエンスに関する研究および技術開発の今後の方向性について議論が行われました。その結果、技術・手法の共創、STIの社会実装の強化、人材育成と共学習、持続可能な連携のための資金確保といった、今後の日ASEAN協力における優先課題が示されました。これらの議論を通じて、科学的知見と実務の連携を強化し、今後の具体的な協力の方向性を明確にすることができました。
防災科研施設の視察
第2日目の午後には、防災科研つくば本所において研究施設の視察が行われました。参加者は、MOWLAS(陸海統合地震津波火山観測網)ネットワークセンター、MPレーダー解析室/気象レーダー、巨大岩石摩擦試験機、大型降雨実験施設などを見学し、日本の防災科学における観測・実験基盤への理解を深めました。
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- 大型降雨実験施設の見学
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- 巨大岩石摩擦試験機の見学
今後の日本とASEANの連携強化に向けて
閉会にあたり、タイ気象局(Thai Meteorological Department)の代表および防災科学技術研究所の進藤和澄理事より挨拶があり、今後の協力の継続と発展の重要性が強調されました。
本ワークショップを通じて、日本とASEANからの参加者は、防災科学の発展とその社会実装を通じて、地域のレジリエンス向上と人々の安全・安心の確保に向けた取組をさらに推進していくことを確認しました。
防災科研施設の見学をもって、2日間のプログラムは終了しました。
