参画機関
日本赤十字看護大学附属災害救護研究所


1.設立の経緯
我が国の災害対応は、阪神・淡路大震災を契機に急速に発展し、医療だけでなく、被災者の生活を支える様々な分野の組織・団体等が参画して協働するようになりました。その活動は年々改善され、大きく進化し続けていることは、我が国のみならず、世界の趨勢ともなっています。 こうした災害救護を取り巻く変化のなかで、将来にわたり日本赤十字社が国内外問わず災害救護活動に貢献するためには、長年の経験で得た知見を学術的に分析・集約して社会に還元するとともに、新たな知見や技術を積極的に活用するための調査研究を行うことが必要です。
日本赤十字社の災害時の活動は、赤いクロスマークを付けたユニフォームとともに広く日本中に周知されています。それは紛れもない事実ですが、国内の災害時対応においてはNPO組織等各種の団体や組織の活動も活発になっており、質、量ともに体制が整ってきています。従って、改めて赤十字の使命や役割は何かを再考し、そのビジョンを打ち出すことが重要であり、そのために研究所が必要であるとして、災害救護研究所は、日本赤十字看護大学の附属機関として2021(令和3)年6月1日に設置されました。
2.設置目的
日本赤十字社の救護活動を中心とする諸活動等で得た知見を広く社会に発信・還元するとともに、災害救護に関する研究・教育活動を通じて我が国の救護の質・量の向上と活動領域の拡大に寄与することで、被災者の苦痛の予防・軽減に資することを目的に設置されました。

3.研究組織体制
令和6年度は「令和6年能登半島地震」において被災者支援には喫緊の課題があると強く認識し、被災者の生活全般に対する支援の在り方や具体的な活動という研究所の部門横断的な課題を解決するため被災者生活支援部門を設置しました。 10の部門において多様な課題に対する研究活動を行い、災害関係雑誌への投稿、論文執筆や学会発表等によりその結果を周知しております。また、ホームページや毎年開催するセミナーなどで、各部門の研究成果や内外のみなさまと共有するための最新情報を発信しています。
それぞれの研究部門の成果が、広く災害対策にかかる分野の発展に貢献することを目指して、当研究所はこれからも行政や他機関との連携・協働を進めていきます。
(1)災害救護部門
医療救護に関する研究と教育を実施して災害救護の発展に貢献します
災害時のみならず平時における準備や体制構築を含め、災害現場での活動から災害対策本部の活動までの多場面にわたり、国内での医療救護活動に関しての研究と教育を行い、日本赤十字社の災害時の救護班の進化および日本の災害救護の発展に役立つ研究を行っています。
(2)国際医療救援部門
長年の日赤の海外医療支援の知識と経験を活かして未来に寄与します
戦後1967年のコンゴ動乱に始まり、長年行ってきた赤十字の海外医療支援の知識と経験を無駄にせず、本研究所の他部門、および国際医療救援拠点病院と共同で、将来の人道支援活動に役立つ研究を行っています。
(3)災害看護部門
被災者の健康と生活に関する研究を行い災害救護・減災に寄与します
世界中で災害が起きており、人々の生活環境が悪化し、健康を害している状況があります。発災後の救護・復旧支援、災害による生活と健康への影響低減に関する研究と教育を行い、災害救護と減災の発展に役立つ研究をしています。
(4)防災減災部門
自助・共助の力を高め実用に資する防災・減災のあり方を追求します
防災減災部門では、災害マネジメントサイクル全体を俯瞰し、現在の防災・減災に足りない部分を中心に、実際に役に立つツール等の開発に軸足を据えて研究を進めています。研究成果は広く一般の方々への普及啓発を主な目的とします。
(5)国際救援部門
日本から世界へ、世界から日本へ、災害や危機に向き合う力を高めます
赤十字は世界中で災害や危機に対応しています。国際救援部門は、日本における対応力を高め世界に伝えること、また、世界で日々新たに積み上げられている対応力を日本に応用することを目的として研究しています。
(6)心理社会的支援部門
災害時の心理社会的支援の発展と変革に寄与します
災害時に身体の健康とともに、心理・社会面のウェルビーイングもいたわる支援のあり方を実現するべきであるとして、支援が必要な災害現場の実践知とセオリーを統合した研究を行い、知見の集約および発信に取り組んでいます。
(7)感染症部門
災害時の感染症対策に関する研究を進め、被災地の安全な環境作りに貢献します
一般に災害時には衛生環境が劣悪化して感染症が発生しやすくなります。災害後に必ず感染症が流行する訳ではありませんが、感染症対策は必ず必要になります。特に新型コロナウイルスの流行以降、効果的な対策を進めることの重要性は高まっています。感染症対策の強化に関する研究をしています。
(8)災害ボランティア部門
人間のいのちと健康、尊厳を守るボランティアの活動を支援します
頻発・広域・激甚化する災害に対し長く被災者の支援活動に携わってきた赤十字奉仕団(ボランティア)の役割やノウハウ等を集積、広く活用できるよう可視化すると共にノウハウの発展や活動に必要な支援等を研究しています。
(9)災害救援技術部門
災害時、生命と尊厳を守り、苦痛を軽減する「人道技術」の共創、発信拠点
被災者の生命と尊厳を守り、苦痛を軽減することを支援する「人道技術」の研究開発拠点です。多様な分野の専門家と、災害時に生命を守るための技術や手法を共創し、社会に幅広く共有することで、災害に強い社会の構築に役立ちます。
(10)被災者生活支援部門
人の尊厳を守る避難生活を社会実装します
避難生活が健康被害をもたらし、「災害関連死」を招いている現状を打破するため、急性期から慢性期の時間軸と、様々な団体や本研究所他部門の連携という空間軸の中で、避難生活の改善を図る仕組みやその運用をこの国が社会実装することを目標として研究します。
- 日本赤十字看護大学附属災害救護研究所 〒150-0012 東京都渋谷区広尾4-1-3 日本赤十字看護大学内
- https://jrcdmri.jp/