参画機関

九州大学大学院工学研究院附属アジア防災研究所

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1. 設立の経緯

これまで培ってきた災害研究の推進にもかかわらず、先進国、発展途上国の双方で、災害による被害が依然として増加しています。巨大な自然災害は水、食料、エネルギー、環境などの人間の安全保障を脅かしています。さらに、災害は九州という地 域レベル、日本という国レベルを超えて、経済・社会活動の国際化は、局所的な危機 を世界の持続的な経済発展への脅威としており、この傾向は経済発展と人口増加が著しいアジア地域で特に顕著です。 九州北部豪雨災害や西日本豪雨災害などの気象の凶暴化による大規模災害の頻発、東日本大震災で明らかになったハードに過度に依存した防災体制の限界、原子力災害等の低頻度・大規模・複合型災害への対応の必要性等を踏まえ、防災・減災分野の応用科学技術の開発を目指すため、九州大学大学院工学研究院において、土 木系部門の防災関係講座が中心となり、原子力災害に対応するエネルギー量子工学部門、火山災害に対応する地球資源システム工学部門と連携し、2013 年 4 月に学際的な防災研究を行う工学研究院附属アジア防災研究センターを設立しました。

2. 研究方針

アジア防災研究センターの研究分野は、以下の4分野です。

・第一は原子力災害等、低頻度・大規模・ 複合型災害に対応するための、国際社会、 地域社会と連携したソフト対策も含む統合的な防災システム確立のための研究を行います。本分野は国際科学会議(ICSU)により提唱されたIntegrated Research on Disaster Risk (IRDR)の概念で近年自然災害への適用が研究され、実社会へ貢献してきましたが、気候変動による気象の凶暴化に激しく直面するアジア地域や九州 地域においてはその対応が特に強く望まれます。

・第二はアジア地域で今後予想される原子力発電所の増設、大都市圏に近接した 原子力発電所を抱える九州の特性を踏まえた、原子力災害への防災体制の確立に 関する研究です。

・第三は熱帯・亜熱帯気候にみられる極端気象による大規模水害や深層崩壊等大規模土砂災害に関する研究です。熱帯・亜熱帯アジア地域と連携した災害対策に関する研究は日本にとっても今後の気候変 動を考えると非常に重要な課題です。

・第四は地域・国際連携に力で、大規模かつ複合化する防災対策に地域防災計画への協力や、それを通じた新たな研究ニーズの発掘、またアジア地域との実務及び研究協力の強化を図ります。

3. 研究組織

アジア防災研究センターは専任教員を 配置する 4 つの研究分野(防災システム、水関連災害、土砂災害、都市地域防災・国際連携)と兼務教員による4つの研究分野(原子力災害、災害廃棄物、火山災害、地震災害)から構成されます。各研究分野を紹介するURLは以下の通りです。

防災システム分野
https://www.eng.kyushu-u.ac.jp/lab_drr01.html
水関連災害分野
https://www.eng.kyushu-u.ac.jp/lab_drr03.html
土砂災害分野(現在空席)
都市地域防災・国際連携分野
https://www.eng.kyushu-u.ac.jp/lab_drr02.html
※原子力災害分野
https://www.eng.kyushu-u.ac.jp/lab_quantum07.html
※災害廃棄物分野
https://www.eng.kyushu-u.ac.jp/lab_urban05.html
※火山災害分野
https://www.eng.kyushu-u.ac.jp/lab_earth03.html
※地震災害分野
https://www.eng.kyushu-u.ac.jp/lab_civil03.html
※:兼務教員

4. 今後の展開

アジア防災研究センターでは、2017年の九州北部豪雨災害を契機に工学研究院に限らず50名を超える教員を分野横断的に集めて「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」を組織し、九州北部豪雨災害の被災地である福岡県朝倉市、東峰村を中心に様々な活動を実施し、大きな成果をあげました。この経験を活かし、今後は防災・減災研究の成果を社会へ実装・普及を図るため、九州大学全学で分野横断的に防災・減災研究を進める拠点を整備してゆく方針です。
(図1)

また、2018年度より「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第 2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」において市町村災害対応統合システム(Integrated-System for Disaster Reduction for Municipalities(IDR4M))を開発し、システムの改良を図るとともにその普及に取り組んでいるところです。
(図2)

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図1: 国家レジリエンス(防災・減災)の強化の各研究テーマとIDR4M

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図2:研究者、行政、住民が連携した防災減災活動

  • 九州大学大学院工学研究院附属アジア防災研究所
  • https://asia.doc.kyushu-u.ac.jp/