お知らせ
国立研究開発法人防災科学技術研究所
E-ディフェンス公開実験のお知らせ
-伝統的木造建築技術により建てられた古民家へのアウターフレーム補強の有効性検証-
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:林 春男)と兵庫県(共同研究機関:国立大学法人神戸大学)は、共同研究として、伝統的な木造建築技術で建てられた古民家へのアウターフレーム補強の有効性を検証するため、木造軸組の実大試験体を用いた加震実験を兵庫耐震工学研究センターの実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)において2022年12月14日(水)に公開で実施します。
- 1.日時
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2022年12月14日(水)
- 2.場所
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国立研究開発法人防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター
〒673-0515 兵庫県三木市志染町三津田西亀屋1501-21 - 3.対象
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報道機関・研究機関・建設関係者・防災関係者・一般の方
- 4.申込方法
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以下のURLから事前登録が必要。
※定員50人、先着順。報道機関以外の方を対象。
- 5.実施主体
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国立研究開発法人防災科学技術研究所、兵庫県、国立大学法人神戸大学(兵庫県の共同研究機関)
【実験担当者】
<国立研究開発法人防災科学技術研究所>
地震減災実験研究部門 主幹研究員 岸田 明子
地震減災実験研究部門 特別研究員 福井 弘久
<兵庫県危機管理部>
防災支援課防災企画班長 島浦 佳樹
防災支援課防災企画班 岡田 真裕美
<国立大学法人神戸大学大学院工学研究科>
建築構造ダイナミクス計測・制御研究室 教授 向井 洋一
建築構造制御研究室 教授 藤谷 秀雄
鋼構造研究室 准教授 難波 尚
安全都市づくり研究室 准教授 藤永 隆 - 6.内容
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別紙資料による。
(別紙資料)E-ディフェンス公開実験のお知らせ-伝統的木造建築技術により建てられた古民家へのアウターフレーム補強の有効性検証-
- はじめに
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兵庫県内には優良な古民家が数多く存在しており、兵庫県では2007年度(平成19年度)から古民家再生促進支援事業を実施し、木造住宅の優良な既存ストックの有効活用、伝統的な木造建築技術やまちなみ景観の維持・継承に向けて取り組んでいます。
1995年の兵庫県南部地震以降、木造建物に対する耐震化の研究は飛躍的に進み、既存木造建物の耐震化にも様々な補強工法が利用されるに至っています。しかし、建築基準法以前に建てられた古民家を対象とした場合には、十分な耐震効果が発揮可能か判断することが難しく、古民家の安全・安心な利活用を促進するためには、補強効果が明確にわかるような耐震補強工法を準備することが重要な課題と考えられます。
また、大黒柱やむき出しの太い梁(はり)などが生み出す開放的な空間など、古民家の情緒を活かしつつ耐震性を確保するには、内装の改修を最小限に抑えることができる耐震工法の検討も必要となります。
本研究では、建物自体の改修工程を少なくしつつ、耐震性の向上を可能とするアウターフレーム工法の開発を目指し、実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)の震動台での実大実験を実施します。
アウターフレーム工法は、外付け補助フレームと建物とをダンパーなどの連結材を介して接合する連結制振工法です。構造性能が明確な補助フレームを設置して、対象建物に生じる地震力を補助フレームに伝達することにより、建物の地震荷重負担を低減することで耐震性を高めるという構造計画が可能となります(図1)。
E-ディフェンスでの実験では、実大試験体を用いた振動実験を通して、大地震時にアウターフレーム工法が、その性能を発揮できるための設計条件を明らかにします。図1 アウターフレーム工法の概要図 - 実験概要
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今回の実験に用いる試験体は、2階建て農家型の木造古民家(独立家屋)を想定した、木造軸組の実大試験体(1棟)です(図2)。ただし、実験に用いる試験体では小屋組と屋根部分の製作は省略しています。
実験では、吹き抜け空間を補強するために、水平ダンパー型アウターフレームを吹き抜け空間横の短手方向の壁面に取り付けます。長手方向外端面には、2面の鉛直フレーム型アウターフレームを取り付けます(図1)。水平ダンパー型アウターフレームは、図3のようなオイルダンパーにより、試験体と外部に設置した鉄筋コンクリート壁との間を連結します。また、鉛直フレーム型アウターフレームには、図4のような鋼材リングが塑性変形する時のエネルギー吸収を生かしたダンパー(リングダンパー)を用います。地震が起きた時には、これらのダンパーが地震エネルギーを吸収することにより、建物の被害を小さくすることが期待されます。
実験パターンとして、天井裏および吹き抜け空間に着脱可能な筋交いを設けて、筋交いを設置して水平面を補強した場合(2階床面がかたい場合)と、筋交いを外して水平面を補強しない場合(2階床面がやわらかい場合)を比較検討します。筋交いがある場合とない場合の各々について、アウターフレームを設置した場合と設置しない場合を比較し、アウターフレームの有効性とともに筋交いの有無による影響を明らかにします。図2 試験体パース図図3 水平ダンパー型アウターフレームに用いるオイルダンパー図4 鉛直フレーム型アウターフレームに用いるリングダンパー