お知らせ
「南海トラフ沿いの地震に対する確率論的津波ハザード評価」をさらに充実させ、津波ハザードステーション J-THISで公開しました
1.概要
「津波ハザードステーション(J-THIS)*1」(https://www.j-this.bosai.go.jp/)は、2020年2月に運用を開始した、日本初の確率論的津波ハザード情報*2を提供するシステムです(https://www.bosai.go.jp/info/press/2019/20200221.html)。これまで、地震調査研究推進本部地震調査委員会が2020年に公表した「南海トラフ沿いで発生する大地震の確率論的津波評価」(以下「地震調査委員会(2020)」という。)に関する詳細な情報を提供してきました。
このたび、防災科研の津波ハザード評価に関する研究成果を紹介する「J-THIS Labs」を新設し、最大クラスの地震を含む、南海トラフ沿いで発生する地震発生の多様性を考慮した、防災科研の確率論的津波ハザード評価に関する情報を公開しました。
2.背景
防災科研は全国を対象に確率論的なアプローチによる津波評価研究を実施しており、2020年4月に「南海トラフ沿いの地震に対する確率論的津波ハザード評価」を研究資料第439号として発表しました。
また、防災科研は、専門家による「津波ハザード情報の利活用に関する委員会」(2013年度~2016年度)および「津波ハザード・リスク情報の高度利用に関する委員会」(2017年度~2022年度)を立ち上げ、確率論的な評価によって得られる津波ハザード情報の利活用に向けた議論を行ってきました。委員会では、多様な津波ハザード情報を利活用できる公開システムの重要性が提言されています。
こうした経緯を踏まえ、利用者がそれぞれのニーズに応じて、的確に津波ハザード情報を利活用できることを目的として、防災科研の津波ハザード評価に関する研究成果を紹介するJ-THIS Labsを新設し、「南海トラフ沿いの地震に対する確率論的津波ハザード評価」に関する津波ハザード情報を更に充実させ、公開しました。
3.新コンテンツ
J-THIS Labsでは、防災科研の研究資料第439号の第一部本編(doi.org/10.24732/nied.00002257)、第一部付録編(doi.org/10.24732/nied.00002258)それぞれに関する津波ハザード情報を公開しました。公開する津波ハザード情報については、ウェブ上での閲覧だけでなく、数値データとしてのダウンロード、利用者が独自に構築したシステムに直接的に取得できるWeb API*3機能の利用が可能です。
- (1)研究資料第439号 第一部本編
- 第一部本編は、南海トラフ沿いで発生するマグニチュード(M)8クラスから最大クラスのプレート間地震を対象とした、ごく低頻度の巨大津波ハザードを含む確率論的津波ハザード評価です。以下の津波ハザード情報を公開します。
- 最大水位上昇量*4 3m、5m、10mの30年超過確率*5分布
・複数の評価基準日を選択可能(2020年版、2021年版、2022年版、2023年版)
・2種類の配色方法を選択可能(3色表示、6色表示) - 30年超過確率3%、6%、26%の最大水位上昇量分布
・複数の評価基準日を選択可能(2020年版、2021年版、2022年版、2023年版) - 選択した海岸地点におけるハザードカーブ*6
・複数の評価基準日を選択可能(2020年版、2021年版、2022年版、2023年版) - 確率論的津波評価に用いた波源断層モデル*7(3480種類)
・すべり量分布、断層パラメータ - 選択した波源断層モデルによる最大水位上昇量分布
- 確率論的津波評価に用いた海底地形図(注1)
(注1) 既に公開している海底地形図と同じ内容です。
- (2)研究資料第439号 第一部付録編
- 第一部付録編は、地震調査委員会(2020)と同様に、南海トラフ沿いで発生するM8クラスからM9のプレート間地震を対象とした確率論的津波ハザード評価です。評価基準日を2020年1月1日とする確率論的津波ハザード評価は、地震調査委員会(2020)の確率論的津波評価と等価な内容であり、既にJ-THISで公開しています。第一部付録編は第一部本編とは異なり、最大クラスの地震等によるごく低頻度の巨大津波ハザードは評価に含まれません。以下の津波ハザード情報を公開します。
- 最大水位上昇量3m、5m、10mの30年超過確率分布
・複数の評価基準日を選択可能(2021年版、2022年版、2023年版) - 30年超過確率3%、6%、26%の最大水位上昇量分布
・複数の評価基準日を選択可能(2021年版、2022年版、2023年版) - 選択した海岸地点におけるハザードカーブ
・複数の評価基準日を選択可能(2021年版、2022年版、2023年版) - 選択した海岸地点における最大水位上昇量のヒストグラム
- 確率論的津波評価に用いた波源断層モデル(2720種類)(注2)
・すべり量分布、断層パラメータ - 選択した波源断層モデルによる最大水位上昇量分布(注2)
- 確率論的津波評価に用いた海底地形図(注2)
(注2) 既に公開している波源断層モデル、最大水位上昇量分布、海底地形図と同じ内容です。




補足説明資料
- *1 J-THIS(ジェイディス)
- Japan Tsunami Hazard Information Station、訳:津波ハザードステーション。
- *2 確率論的津波ハザード情報
- 本システムでは、南海トラフ沿いで発生し、津波の原因となる様々な地震について、長期的な地震発生の確率とその地震によって発生する津波の高さを推定することで、津波に見舞われる可能性を海岸沿いの地点ごとに定量的に評価した情報を提供します。
- *3 Web API
- HTTPリクエスト(URL)に対して、テキスト情報や画像等を応答する仕組みです。
- *4 最大水位上昇量
- 東京湾平均海面(T.P.)を基準面とし測定した最大水位から地震発生によるその地点での地盤変動量を差し引いた相対的な水位の上昇量。
- *5 超過確率
- ある地点で、一定の期間内(例えば30年)に、来襲する津波の高さがある値を超える確率。
- *6 ハザードカーブ
- ある地点に来襲する津波の高さ(最大水位上昇量)とその超過確率の関係を曲線(グラフ)で表すことができます。この曲線のことを「ハザードカーブ」といいます。
- *7 波源断層モデル
- 断層面の位置・形状が与えられ、断層すべりの不均質性が指定されたモデルを、「波源断層モデル」といいます。