受賞一覧
2019年度日本地震学会若手学術奨励賞を受賞しました
地震津波防災研究部門の浦田優美特別研究員が、2019年度日本地震学会若手学術奨励賞を受賞しましたのでお知らせいたします。
この賞は、すぐれた研究により地震学の分野で特に顕著な業績をあげた35歳未満の会員に贈られます。浦田優美特別研究員の業績が優れていると認められ、その将来性が期待されるとして、今回の受賞に至りました。
授賞式は2020年度日本地震学会秋季大会会場にて行われる予定です。
受賞対象研究
- 物理素過程と応力場を考慮した3次元動的地震破壊過程の研究
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受賞理由
大地震に至る要因の一つとして、thermal pressurization(摩擦発熱による間隙水圧上昇による断層摩擦の弱化;以下TP)がある。TPは、理論的にも地質学的観察からもその発生が予想されていたが、断層の破壊過程に具体的にどのような影響を与えるのかは良く分かっていなかった。受賞者は、当時、技術的に困難であった3次元動的破壊伝播の数値計算を行い、TPによる破壊速度の増加やすべり分布の不均質化をもたらす効果などを定量的に明らかにした。また、水の相変化の効果を世界で初めてTPの数値計算に取り入れた研究は、受賞者の優れた独創性を示すものと言える。TPは2011年東北地方太平洋沖地震の巨大化に寄与したことが報告されており、受賞者が東北地震に先駆けてTPの力学的機構を解明した意義は大きく、その研究成果は高く評価される。
受賞者は、上記の基礎的な理論研究に加え、岩石摩擦実験や自然地震のデータを基にしたモデリング研究により、不安定すべり時のデータから摩擦パラメータを推定する手法を確立するなど、地震発生機構の理解を進展させることにも貢献した。さらに、2016年熊本地震の力学条件に着目し、データ解析と大規模シミュレーションによって、前震—本震系列を再現するために必要となる背景応力場と断層摩擦パラメータの条件を求めることに成功したことも意義深い。
理論研究ならびに観測データと大規模数値シミュレーションを基に新しい知見を着実に生み出し続けていることは、受賞者の高い数理的能力だけでなく、自然現象に対する鋭い洞察力、綿密な計画力とそれを完遂する実行力を示している。加えて、野外観測研究・室内実験などの幅広い分野に活動範囲を広げ、独創的な研究の素地を作っている。2017年EGU学会では招待講演を依頼されるなど国際的にも活躍しており、地震発生機構の解明・予測研究の発展に一層貢献することが期待される。
以上のように、受賞者のすぐれた業績と高い能力を認め、その将来の活躍も期待し、日本地震学会若手学術奨励賞を授賞する。
受賞研究者のコメント
栄誉ある賞をいただき、大変光栄です。
大地震発生機構を解明したいとの思いから、数値シミュレーションを主軸に、基礎理論研究、ならびに岩石摩擦実験・自然地震のデータを基にしたモデリング研究に取り組んで参りました。
地震発生機構の解明・予測研究の発展に貢献できるよう、より一層研究活動に精進いたします。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。