受賞一覧
令和元年度地盤工学会論文賞(英文部門)を受賞しました
地震減災実験研究部門の中澤博志主幹研究員が、神戸大学の澤田豊准教授らとともに、令和元年度地盤工学会論文賞(英文部門)を受賞しましたのでお知らせいたします。
この賞は、論文の全部または一部が、平成29年10月1日から令和元年9月30日までの2年間以内に地盤工学会機関誌類に発表されたものから、地盤工学に関する学術および技術の進展に顕著な貢献をしたと認められる業績を対象として地震工学会から贈られる賞です。
中澤博志主幹研究員らの成果が、ため池整備の実務に取り入れられる価値を有し、数値解析のベンチマークとしての今後の活用が期待できるなど、学術上の重要な情報を与えていることが高く評価され受賞に至りました。
受賞対象論文
- Seismic performance of small earth dams with sloping core zones and geosynthetic clay liners using full-scale shaking table tests
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澤田豊、中澤博志、小田哲也、小林成太、澁谷啓、河端俊典
掲載誌:Soils and Foundations, Vol.58,pp519-533,2018
受賞理由
本論文は、ジオシンセティッククレイライナー(GCL)を用いて改修されたため池堤体と従来工法の傾斜コアで改修された堤体の動的挙動と耐震性について、Eディフェンスでの実大規模振動実験の結果を基に論じたものである。堤体の変位や堤体内部の加速度の計測結果から、GCL改修堤体の耐震性が傾斜コア改修堤体に劣らないことを明らかにしている。今後、傾斜コアに必要な良質な粘性土の枯渇が予想されるため、従来工法に代わる改修方法が検証された意義は大きく、本成果は、ため池整備の実務に取り入れられる価値を有している。さらに、数値解析のベンチマークとしての今後の活用が期待できるなど、学術上の重要な情報を与えている。以上より、論文賞(英文部門)としてふさわしいと認められた。
受賞研究者のコメント

本論文は、兵庫県と神戸大学と共同で行った「ため池堤体の耐震安全性に関する実験研究」プロジェクトにおいて、2016年1月にE-ディフェンスで実施した実大実験から得られた成果を取りまとめたものです。本実験では、今後のため池の整備に向けて、ジオシンセティッククレイライナーという遮水シートを用いた堤体の改修方法の確かさを検証したもので、兵庫県内の幾つかの現場でも取り入れられており、他府県からも注目されています。著者の一人としては、本受賞で、研究上の意義をお認め戴いたこと以上に、行政との共同研究の中で、実験から実装までを考え積み重ねてきた成果が評価されたと感じております。
最後に、本論文賞を戴くことができ光栄に感じておりますが、実験を支えてくださった多数の方々のご協力があってこその受賞と思っております。ありがとうございました。