受賞一覧
2021年度日本地震学会若手学術奨励賞を受賞しました
地震津波火山ネットワークセンターの久保久彦主任研究員が、2021年度日本地震学会若手学術奨励賞を受賞しましたのでお知らせいたします。

この賞は、すぐれた研究により地震学の分野で特に顕著な業績をあげた若手研究者に贈られます。久保久彦主任研究員の業績が優れていると認められ、その将来性が期待されるとして、今回の受賞に至りました。
授賞式(2022年6月15日)※2022年6月15日更新
授賞式が、2022年6月15日に日本地震学会の2022年度定時社員総会に合わせて開催されました。
受賞対象研究
- 地震破壊過程の解明とデータ駆動型研究による地震動モデルの高度化
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受賞理由
確度の高い地震破壊過程を客観的に推定するためには、観測記録に適した情報量の取り扱いが効果的である。また、大地震のような低頻度大規模現象を含めたデータ駆動型研究においても、その威力が発揮される。受賞者は、観測地震動に基づく研究によって大地震の震源過程と強震動の成因やその予測に関する重要な知見を得てきた。また、データ駆動型研究にも取り組み、機械学習と物理モデルを組み合わせた地震動指標の予測高度化を行う等、大きな成果をあげてきた。
地震破壊過程の解明に関しては、2011年東北地方太平洋沖地震や2011年茨城県沖の地震、2016年熊本地震等に対して地震波形記録等に基づく解析を行い、それらの断層破壊過程と地震波放射の詳細を明らかにするとともに、沈み込む海山や隣り合う他のプレートが断層破壊に与える影響や、スロー地震発生域との空間的な関係、プレート境界大地震における放射地震波の周期特性の詳細な深さ依存性等、プレート境界の震源理解において新たな視点を与えた。また、データの粗密を巧みに利用して、地震波形を用いた震源過程解析にフルベイジアンアプローチを導入した研究や、未知パラメータとその最適な次元を推定するトランスディメンジョナルインバージョンが断層すべり分布推定において有用であることを示した研究など、情報学の制約を取り入れた地震破壊過程の解析手法を開発している。
データ駆動型研究による地震動モデルの高度化に関しては、海域地震観測網の地震動増幅特性や強震時の非線形地盤応答に関する研究、深発地震による地震動予測式の提案など、未開拓の分野に挑戦した。さらに地震動ビッグデータと機械学習を組み合わせたデータ駆動型研究を進めている。地震動指標の予測問題においては、強い揺れの記録が少ない地震動データセットに対して機械学習を行うと、防災上重要な強震動が過小評価される予測バイアスが生じることを明らかにした。解決策として、物理モデルに基づく従来の予測式による予測と観測の残差を学習した機械学習モデルを作成し、それと従来の予測式を組み合わせたハイブリッド予測アプローチを提案して、単一の手法に比べて優れた予測性能を得ることに成功した。このように、自然現象に内在する不足情報を活用して成果を上げた姿勢は高く評価され、今後の研究展開において受賞者の一層の貢献が期待される。
受賞コメント
この度は栄誉ある賞をいただき大変光栄に思います。これまでご指導、ご支援いただいた学生時代からの先生方、防災科研の皆様、共同研究者の皆様、関係の皆様に心から御礼申し上げます。これまでの研究生活を振り返ると、強震動(地震による地面の強い揺れ)をはじめとする観測データへの強い好奇心が根幹にありました。これからもデータへの好奇心を忘れずに、地震学の発展および地震をはじめとする自然災害の軽減に貢献できるような研究を進めていく所存ですので、皆様の変わらぬご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。