受賞一覧
2024年度日本地震工学会論文奨励賞を受賞しました
地震津波複合災害研究部門の松本雄馬特別研究員が、2024年度日本地震工学会論文奨励賞を受賞しましたのでお知らせいたします。
本賞は、すぐれた研究により地震工学および地震防災の分野で顕著な業績をあげた若手研究者を奨励するために贈られるものです。

受賞業績名
- 深層生成モデルを用いた3成分地震動時刻歴データの確率モデル
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受賞理由
確率論的地震ハザード評価においては地震の発生の時空間分布等を確率モデルで表現し、各地点の地震動の超過確率が評価されるが、地震動は地震動強さ指標で評価されることが一般的で、構造物の詳細な耐震性能評価に不可欠な地震動時刻歴データを得ることには課題がある。 本論文では、 GANs ( Generative
Adversarial Networks)と呼ばれる深層生成モデルを用いて、日本で発生した地殻内地震を対象に、3成分の加速度時刻歴波形データを震源・伝播経路・サイト特性に関する指標と同時に生成可能な確率モデルを構築している。この確率モデルを用いて地震規模、震源距離、地盤特性、成分に対応した多様な特徴を有する波形データが生成されること、生成波形データから計算される位相・周波数特性を表す指標の累積分布や地震動強度の分布が観測データによる分布と整合することを示し、既往の地震動予測式との比較に基づき構築手法の適切性を確認している。 本論文の研究成果は、震源・伝播経路・サイト特性を反映した多数の地震動時刻歴波形データを水平動、上下動の違いも含めて適切かつ効率的・効果的に生成する手法を提案するものであり、今後の確率論的地震ハザード評価の高度化への貢献が期待される。
以上のことから、本論文は論文奨励賞に相応しいと判断できる。
公益社団法人日本地震工学会サイトより引用
受賞コメント
この度は栄誉ある賞をいただき、誠に光栄に存じます。これまでご指導いただいた先生方、ならびに関係の皆様に深く御礼申し上げます。
本研究は、確率論的地震ハザード評価のさらなる発展を目標として、StyleGAN2と呼ばれる深層学習の手法を活用し、地震動の生成AIを構築したものです。近年急速に発展している生成AIは社会に大きな影響を与えつつあり、その利活用について様々な議論がなされています。今後もそのような最新技術を駆使した地震防災のあり方について研究開発を継続し、社会に貢献できるよう尽力してまいります。