受賞一覧
中村一樹センター長が令和7年防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞しました
極端気象災害研究領域 雪氷防災研究センターの中村一樹センター長が令和7年防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞しましたのでお知らせいたします。
「防災功労者内閣総理大臣表彰」とは、『「防災の日」及び「防災週間」について』(昭和57年5月11日閣議了解)に基づき、災害時における人命救助や被害の拡大防止等の防災活動の実施、平時における防災思想の普及または防災体制の整備の面で貢献し、特にその功績が顕著であると認められる団体または個人を対象として表彰されるものです。
表彰式は、9月17日に総理大臣官邸で行われました。

功績の概要
氏は、気候変動に伴う降積雪の量的、質的な変化と高齢化等の社会情勢の変化により変容している雪氷災害に対応するため、令和7年冬期の青森県の豪雪災害のような大きな豪雪災害が発生した際に、多様な機関が参画したチームを組織して自らが中心となっていち早く現地調査を実施し、災害対策に資する情報提供を自治体や市民等に行いながら、それに対するフィードバックを得て行う共創研究の体制を構築し、気候変動下の豪雪災害対策研究を推進した。
氏は、スマホAI路面判定システムの開発をはじめとする環境変化に適応した克雪技術の開発研究を中心的に実施した。同システムは、青森県をはじめ、北海道、東北、北陸地方の多数の自治体に試験運用エリアが広がっており、首都高速道路等の道路管理者でも実証試験が開始されている。
(内閣府令和7年防災功労者内閣総理大臣表彰の受賞者決定についてより)
受賞コメント
栄誉ある表彰をいただき感謝申し上げます。
今回の受賞に当たり推薦いただいた文部科学省の皆様に感謝致します。また、公表されている功績の概要にもありますが、私たちが推進してきた、雪氷災害対策の研究成果を利用する機関や関係者の皆様からのフィードバックを得ながら研究を進める共創研究に対して評価いただいたのではないかと感じています。その意味で、研究所の同僚を始めこれまで関わっていただいた皆様に深く感謝致します。ありがとうございました。
毎年半年近くの期間を雪に覆われる雪国では、雪氷災害は生活に密着した災害です。毎年数十名から百名程度の方が犠牲になっており、日本の自然災害の要因の中で雪氷災害に起因する死者数が最も多くなる年も珍しくありません。生活のためには道路や家屋の除雪などの雪対策は必須で、雪対策が人の命のみならず、様々な産業の維持や発展に直結しています。しかし、雪氷災害は生活に関わる複数の要素に複雑に関係しており、あるひとつの雪氷災害の防災上の課題を解決する対策を実施しようとすると、他方では弊害となることもあり、直接的な防災対策が難しい災害だということもできます。
近年は、冬季の平均気温が上昇し、日本の冬も湿った重たい降積雪や集中豪雪に起因する雪氷災害(除雪作業中や落雪の事故、立ち往生、交通障害、着雪による倒木、停電、果樹被害など)の発生が目立ち、気候変動の影響を受けつつあると考えられています。さらに、高齢化、過疎化による雪処理の担い手不足、財政難など社会経済情勢も変化しています。また、2024年元旦に発生した令和6年能登半島地震のように、複合災害への対策も課題となっています。
これらの課題を解決するために、私は、2024/25年冬季の青森県の雪氷災害発生時に実施したように、現地の共同研究者と現地調査を実施し、その結果を分析して課題とニーズを明確化しています。その上で、スマホAI路面判定システムや雪氷災害発生予測システムなどの気候変動適応にも資する克雪技術の研究開発を行っています。スマホAI路面判定システムを例に取ると、札幌市、青森県、新潟市などの自治体で、それぞれの地域の課題とニーズに基づいた研究開発や実証実験を行っています。
今後は、雪の負の側面を減らす研究はもちろん、正の効果を伸ばす研究も実施することで、その地域の雪資源ポテンシャルを総合的にプラスにすることを実現し、自治体や企業、大学などと共創しながら雪国を豊かにする研究を行いたいと考えています。その中で雪に携わる人材の育成も同時に進めたいと思います。