受賞一覧
2025年度日本雪氷学会北信越支部雪氷奨励賞・雪氷功労賞を受賞しました
雪氷防災研究センターの砂子宗次朗特別研究員が2025年度日本雪氷学会北信越支部雪氷奨励賞、上石勲特別研究員が雪氷功労賞を受賞しましたのでお知らせいたします。
砂子宗次朗特別研究員が受賞した雪氷奨励賞は、雪氷学の研究に顕著な成果を上げ、今後の発展を奨励するために贈られるもので、上石勲特別研究員が受賞した雪氷功労賞は、支部の発展に著しい貢献をしたとして贈られるものです。
授賞式は5月31日に長野市で開催された2025年度日本雪氷学会北信越支部総会で行われました。

受賞理由
- 雪氷奨励賞:砂子宗次朗特別研究員
件名:フィールド観測に基づいた多様な雪氷環境変動および雪氷防災に関する研究
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砂子宗次朗氏は、名古屋大学在学中よりヒマラヤ地域の氷河を対象にフィールド観測を中心とした研究を実施しており、現場観測と熱収支モデルにより高標高域に位置する大型氷河における長期質量収支変動を初めて明らかにした。また、UAVとGPS測量結果から得られた数値標高モデルを利用して、小型氷河における氷河変動を見積もる研究 にも取り組んできた。さらに同氏の研究は氷河変動のみならず、2015年のネパール・ゴルカ地震時に発生した雪崩のUAV測量結果の精度検証など多岐にわたる分野へと広がっている。
2019年に防災科学技術研究所雪氷防災研究センター(長岡)に勤務してからは、フィールド観測で培った知識を生かし、防災科学技術研究所が運用する積雪・気象観測ネットワーク(SW-NET)の観測点の管理・整備、取得データの品質管理や解析を主導している。同氏が管理する情報は、雪氷防災対策の基礎情報としてwebで公開されているだけではなく、気象庁にリアルタイムでデータ提供されるなど,地域防災にも貢献している.また家屋の屋根にGNSSを設置し、積雪の影響による測位誤差を利用することで、直接観測が困難な屋根雪重量を推定する新しい手法開発に意欲的に取り組んでいる。
さらに同氏はスマートフォンを活用したAI路面判定システムの開発に携わり、路面状態の検証のため移動観測車を用いた気象観測やデータ解析を数年にわたり実施してきた。得られた知見は、AI路面判定システムの検証・精度向上に貢献している。また現場観測のみならず、GISを活用した除雪車の最適ルート解析アルゴリズムの開発など、点の予測を面的に展開するための研究も進めている。
以上のように、砂子宗次朗氏は、主研究テーマを氷河から雪氷災害へとシフトさせつつ、これまで培った現場観測技術を基礎に、新たな技術や知見を積極的に取り入れながら研究を推進している。これにより、山岳域の雪氷環境変化に関する研究のみならず雪氷防災研究にも新たな展開が期待されるとともに、今後これらの分野で中心的な役割を果たしていくことが見込まれることから、砂子宗次朗氏の研究活動は雪氷奨励賞に相応しい。
2025年度(公社)日本雪氷学会北信越支部総会 総会資料より - 雪氷功労賞:上石勲特別研究員(前センター長)
件名:長年の雪氷防災対策と支部活動への貢献
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上石勲氏は、1984年3月に富山大学大学院理学研究科修士課程を修了し、(株)アルゴスに勤務し(新潟大学大学院自然科学研究科博士後期課程を社会人で修了)、長きにわたり、数々の雪崩災害の現地調査を行っている。それによって得られた知識・経験と雪崩シミュレーション技術等とを融合させることによって、新しい雪崩危険度の評価方法を確立した。
また、人工雪崩技術等を用いたスキー場の雪崩対策、環境やコスト縮減等に配慮した新しい雪崩対策工法を積極的に提案した。
2006年に防災科学技術研究所雪氷防災研究センター(長岡)に勤務してからは、 2013年3月2日北海道吹雪災害、2014年2月関東甲信地方大雪災害、2017年3月那須岳雪崩災害ほか多くの雪氷災害現場で研究チームを組織していち早く調査を実施し、例えば、文部科学省科学研究費助成事業(特別研究促進費)「2017年3月27日に栃木県那須町で発生した雪崩災害に関する調査研究」の代表を務めるなど、災害調査と自治体等への災害対策支援の中心的な役割を果たした。上記の業績を「2005除雪・防雪ハンドブック」(日本建設機械化協会・雪センター)、等の著書、学会誌への掲載、雪崩研修会等における数多くの講演を通して広く公開し、雪崩防災の技術・知識の普及に著しく貢献した。また、新潟市除雪体制等検証会議委員長(令和3年度、新潟市)、富山県総合雪対策推進会議副委員長、令和2年12月関越自動車道集中降雪に関する対応検討会委員(国土交通省北陸地方整備局、ネクスコ東日本)等数多くの雪氷災害対策検討の委員に就任し、長年の雪氷災害対応で培われた知見を、北信越地域を中心に自治体や道路管理の雪氷災害対策にフィードバックするために尽力した。
さらに、北信越支部役員を長年務め、2017~2020年度には支部長を務めるなど、支部活動にも大きく寄与した。
以上のような上石勲氏の長年の活動は、北信越支部の雪氷防災対策の推進や支部活動に大きく貢献するものであり、雪氷功労賞に相応しい。
2025年度(公社)日本雪氷学会北信越支部総会 総会資料より