報道発表
世界初となる「AIを活用した災害時のSNS情報分析 のための訓練ガイドライン」の策定・公表
2018年4月12日
慶應義塾大学SFC研究所
国立研究開発法人情報通信研究機構
国立研究開発法人防災科学技術研究所
プレスリリース
報道関係各位
慶應義塾大学環境情報学部山口真吾研究室、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)及び国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)は、防災・減災分野への人工知能(AI)の導入・普及をめざして、「人工知能(AI)を活用した災害時のSNS情報分析のための訓練ガイドライン(暫定版)」を共同で策定しましたので、公表します。
防災訓練に対してAI(自然言語処理)を導入するためのガイドラインの策定及び公表は、世界で初めての取り組みであり、今後の防災・減災分野におけるイノベーション創出と先端技術の社会実装に向けて貢献するものとなります。
1.ガイドライン策定の背景
2017年6月5日、慶應義塾大学環境情報学部山口真吾研究室、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)及び国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)は、防災・減災分野への先端的な人工知能技術の導入・普及をめざして共同研究会議(“防災AI共同研究会議”)を設立しました。
防災AI共同研究会議は、地方公共団体などがAIを活用して行う災害時の情報分析について、平時の防災訓練を効果的に実施できるようにするためのガイドラインの策定・公表をめざして活動を行ってきました。
近年、被災者がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用して、災害に関する様々な情報を発信し始めています。災害応急対策を行う機関は、こうしたSNS情報を活用することにより、災害時の状況判断や活動の優先度判定などをより迅速かつ効率的に行うことができるようになります。
しかし、東日本大震災当日(2011年3月11日)のTwitter投稿は約3,300万件にのぼるとされており、限られた人数の職員が膨大な投稿の中から重要な情報を選び出すことは非常に困難です。この問題を解決するため、人間が使う「ことば」をコンピュータに処理させる自然言語処理技術(AIの一種)を活用した「SNS情報分析システム」が既に実用化されており、これからの普及が期待されています。
とはいえ、災害時にSNS情報を確実に活用できるようにするためには、防災訓練にSNS情報分析システムを取り入れ、災害時の切迫した状況でもシステムを間違いなく使用できるように備えておくことが大切です。そこで今回、SNS情報分析システムに関する訓練ガイドラインを策定し、公表しました。
防災訓練に対してAIを導入するためのガイドラインの策定及び公表は、世界で初めての取り組みとなり、今後の防災・減災分野におけるイノベーション創出と先端技術の社会実装に向けて貢献するものとなります。
今回はガイドラインを暫定版として公表するものであり、今後の技術革新の動向やSNS情報分析システムの社会実装の状況等を踏まえて、内容を見直していく予定です。
今後も、NICTは、ICT分野を専門とする我が国唯一の公的研究機関として、社会に存在する膨大な情報や知識のビッグデータ(社会知)を情報源として新たな価値を創出する社会知解析技術の研究開発を推進します。また、NIEDは、災害対応を行う組織間での情報共有を支援するシステムとして、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)において研究開発が進められている「府省庁連携防災情報共有システム(SIP4D)」の代表研究機関として、今後も防災科学技術のイノベーション創出を推進します。
2.ガイドラインのポイント
本訓練ガイドラインは、SNS情報分析システムの概要(第1章)及び対応型図上訓練の実施方法(第2章)をそれぞれ解説する構成となっています。
訓練ガイドラインの本体(PDF)はこちらからダウンロードして下さい。
※URL: https://www.sfc.keio.ac.jp/
- SNS情報分析システムで分析できる災害情報の例
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- 被害状況に関する通報(ライフラインのトラブル、目撃した道路冠水)
- 避難所・緊急避難場所の状況に関する通報(開設状況、人数、不足物資)
- 被災者の避難状況に関する通報(帰宅困難、孤立、困った状況) など
- SNS情報分析システムの導入効果の例
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被災者それぞれの視点から見た、臨場感ある災害情報を収集することができる。
災害情報の整理・分析の作業を自動化・省力化することができる。
人間の能力を超えたビッグデータを短時間で処理できる。電話・FAXの能力を超えて、数十万件から数百万件のSNS投稿をデジタル処理できる。


(参考)防災AI共同研究会議のこれまでの活動
- 2017年6月5日 防災AI共同研究会議の設立
- 2017年8月4日
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人工知能を用いた災害情報分析と訓練に関する公開シンポジウム
~防災・減災分野への最新技術の導入・普及を目指して~
(主催:防災AI共同研究会議、場所:慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス) - 2017年10月16日
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防災AI共同研究会議 編集会議(東京)
- 2017年10月27日
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けいはんな情報通信フェア2017 「防災・減災に挑戦する人工知能プロジェクト」
講演会と防災AI共同研究会議の開催
(主催:防災AI共同研究会議、場所:京都府相楽郡精華町 けいはんなプラザ) - 2018年3月9日
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伊豆東海岸 車座ミーティング~伊豆東海岸のこれからの観光・防災・地域メディア~
講演会等(主催:NICT・電脳防災コンソーシアム・下田市、場所:下田市) - 2018年3月29日
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防災・減災のAIイノベーション戦略と挑戦 公開シンポジウム
講演会と本ガイドラインの紹介 (主催:情報通信研究機構、場所:東京)
本プレスリリースは新聞各紙社会部等にお送りしております。
- 本件及び防災AI共同研究会議に関する問い合わせ先
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慶應義塾大学環境情報学部 山口真吾研究室
E-mail: shingo5[AT]sfc.keio.ac.jp
※[AT]を@に変換してください
- NICTに関すること
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本件の技術について
国立研究開発法人情報通信研究機構
耐災害ICT研究センター 応用領域研究室 大竹 清敬
Tel: 0774-98-6329
E-mail: d-summ[AT]khn.nict.go.jp
※[AT]を@に変換してください広報
国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部 報道室
Tel: 042-327-6923 Fax: 042-327-7587
E-mail: publicity[AT]nict.go.jp
※[AT]を@に変換してください
- NIEDに関すること
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国立研究開発法人防災科学技術研究所 総合防災情報センター
Tel: 029-863-7553
E-mail: risk_office[AT]bosai.go.jp
※[AT]を@に変換してください