報道発表
開発途上国における石造組積造のノンエンジニアド住宅の耐震性向上のための蛇籠を用いた耐震補強工法に関する公開実験
~ネパールにおける石積の伝統的な家の地震被害を防ぎたい!~
平成31年1月30日
国立研究開発法人防災科学技術研究所 国立大学法人千葉大学
株式会社毛利建築設計事務所
プレス発表資料
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:林春男)、千葉大学(学長:徳久剛史)および毛利建築設計事務所(代表取締役社長:毛利信弘)は、「開発途上国における石造組積造のノンエンジニアド住宅の耐震性向上のための蛇籠を用いた耐震補強工法に関する公開実験」を下記の通り開催します。
本実験は、産官学(防災科学技術研究所・千葉大学・毛利建築設計事務所)の共同体制の下、ネパールをはじめとした開発途上国における地震で崩壊しやすい石積の伝統的な家屋を対象に、簡易な補強方法を確立するために行います。防災科学技術研究所(つくば)の大型耐震実験施設において、典型的な庶民住宅を再現した組積造住宅と、同じ住宅をワイヤーメッシュで簡易的に耐震補強した2棟のモデルの比較実験を実施し、耐震補強工法効果を検証します。
なお、今回の公開実験の一部はクラウドファンディングの寄付金により実施されます。したがって、本案内は報道機関および関係機関の方を対象としておりますが、実験はクラウドファンディングの支援者に対しても公開いたします。
- 1.日時
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平成31年2月26日(火)13:00受付開始
- 2.場所
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茨城県つくば市天王台3-1
防災科学技術研究所(つくば)内大型耐震実験施設 - 3.対象
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クラウドファンディングの支援者、報道機関および関係機
- 4.本件配布先
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文部科学記者会、科学記者会、筑波研究学園都市記者会、千葉県政記者クラブ
1.はじめに
国立研究開発法人防災科学技術研究所、国立大学法人千葉大学および毛利建築設計事務所は、共同研究で実施する実大模型実験をクラウドファンディングの支援者、報道機関および関係機関に公開いたします。
- 地震被害の背景—石積住宅の脆弱性—
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昨今、世界各地で地震や豪雨を始めとする大規模な災害が多発しております。特に開発途上国では、伝統的な石積等の脆弱な建物が多く、地震時の崩壊による人的被害が多発する傾向にあります。2015 年のネパール地震における人的被害の大半は、山間部の自分で建設した石積の伝統的な家に集中し、道路事情が悪く建設資材の搬入が困難な状況も相まって、復興が進んでいないのが現状です。
- 人的被害軽減のため—ノンエンジニアド建設への挑戦—
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被害拡大の原因は、庶民住宅の一般的な建設工法である組積造の脆弱性ですが、これら住宅の多くは地域の職人あるいは住民自身によって建設された技術者が関与していない“ノンエンジニアド建設”、いわゆるネパール版既存不適合住宅によるものです。被害軽減のため、まずは現地の住民がお金をかけずに、自ら実施し得る補強方法を身につける必要があります。
- 現地に伝えたい技術—蛇籠技術の応用による耐震補強—
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ネパールでは、様々な構造物に蛇籠が利活用されています。「蛇籠」とは、紀元前の中国で産まれた伝統的な土木技術で、金網籠に石を詰めただけの単純構造ゆえ高い技術力を要しません。運搬が容易で、低コストでの施工が可能であるため、道路擁壁を始め至る所に使われておりました。今までの調査・研究から、蛇籠は地震に対し変形しやすい一方、金網の拘束効果により崩壊しない粘り強さが確認されています。今回、この優れた特徴を“ジャケッティング工法”として庶民住宅の耐震補強技術に活かそうと考えています。このジャケッティング工法は、庶民住宅を金網で巻き丸ごと蛇籠化する住民自らが実施し得る耐震補強技術ですが、国際的に構造研究が進んでいない分野であるため、振動台実験による効果検証を行います。
2.公開時の実験概要
実験の仕様は、図に示すとおりです。同じ組積住宅2戸を振動台上に建設し、無補強とジャケッティング工法による耐震補強した試験体を同時に加振し、耐震補強の効果検証のため、振動特性把握と加振による倒壊レベルの損傷に至るまでの破壊性状を把握します。
なお、石・レンガと泥モルタルの組積造は、研究実績のない分野であるため、データの取得を行うとともに、ネパール現地での防災教育のための実験映像の取得を計画しています。

- 【加振内容(予定)】
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加振は、振動特性の把握(非破壊)および試験体を倒壊に至らせる地震波加振を行います。地震波は、阪神大震災の際の地震波(JMA 神戸波)の振幅を調整した波で行う予定です。
JMA 神戸波(100%)
3.公開スケジュール(予定)
公開は、以下のスケジュールを予定しています。
- 平成31年2月26日(火)
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13:00 受付開始(大型耐震実験施設)
13:30 概要説明( 〃 )
13:45 加振開始- 振動特性の把握
- 地震波加振(阪神大震災の際の地震波(JMA 神戸波)の振幅を10%に調整した波を予定)
- 振動特性の把握
- 地震波加振(阪神大震災の際の地震波(JMA 神戸波)の振幅を30%に調整した波を予定)
- 振動特性の把握
以降、倒壊するまで、振幅を調整しながら続けます。
14:30 実験終了(予定)
15:00 見学および会見(随時)
当日は撮影が可能ですが、状況により開始終了時刻、および各加振間に模型の損傷状況の確認が行われるため、変更となる場合があることを予めご了承下さい。なお、上記のスケジュールは、報道機関および関係機関を対象とさせて戴いております。
4.場所
〒305-0006 茨城県つくば市天王台 3-1 防災科学技術研究所 大型耐震実験施設

5.参加登録
参加を希望される方は,次の申込先へ平成31年2月19日(火)までに参加登録をお願いいたします。
折り返し確認のメールまたは FAX を送らせて頂きます。
- 申込先
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MAIL
toiawase[AT]bosai.go.jp ※[AT]を@に変換してください
(菊地 宛)
FAX
029-863-7699
- 内容に関するお問い合わせ
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国立研究開発法人防災科学技術研究所 地震減災実験研究部門
029-863-7308 (中澤 宛)
6.受付場所のご案内
守衛所で受付後、大型耐震実験施設(矢印先)までお越し下さい。

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