報道発表
都道府県初のLINEを活用した防災チャットボット災害対応訓練を実施
令和元年7月12日
国立研究開発法人 防災科学技術研究所
国立研究開発法人防災科学技術研究所(略称:防災科研、理事長: 林春男)は、茨城県と連携し、都道府県としては全国初となるLINEを活用した防災チャットボ ットを利用した災害対応訓練を、令和元年7月5日に実施した。
訓練では、台風による風水害と土砂災害の想定の下、一般市民役の県下11市担当者が実際にLINEを立ち上げ、防災チャットボットを通じた災害情報の投稿を実施した。県災害対策本部職員はSNSに投稿された情報を最先端の技術を活用したシステムを使って整理し対応した。
本訓練において、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」のテーマI「避難・緊急活動支援統合システムの研究開発」において開発中の防災チャットボットの導入効果の検証を実施した。
1.内容
- 1.取り組みの概要
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国立研究開発法人防災科学技術研究所(略称:防災科研、理事長: 林春男)は、茨城県と連携し、防災チャットボット※1を利用した災害対応訓練(訓練名:令和元年度茨城県風水害対応訓練)を、令和元年7月5日に実施した。防災チャットボットは、従来災害対策本部で十分な活用が行えなかった SNS 情報を、一人ひとりと友達登録されたチャットボットが自動的にやりとりを行うことで、県側からの避難行動に資する危険の呼びかけや、住民側から災害情報の投稿をできるようにするシステムである。
防災科研は、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第 2 期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」のテーマ I「避難・緊急活動支援統合システムの研究開発」を行っており、この中で「対話型災害情報流通基盤の研究開発」として防災チャットボットの研究開発を実施している。本訓練は、この防災チャットボットに係る実証実験を兼ねた検証訓練と位置付けている。また本実験は、高度自然言語処理プラットフォーム※2 との連携検証を兼ねて行った。具体的には、LINE上で動作する防災チャットボット経由で市担当者が送信した災害情報や別途 Twitter から得られた情報を、高度自然言語処理プラットフォームを通じて県災害対策本部要員が収集・整理し、従来県が持っている公的災害情報等と併せて活用することで、迅速で的確な対応を支援できるかどうかを検証した。
※1 防災チャットボットは、SIP 国家レジリエンス 防災チャットボット開発チーム(防災科研、ウェザーニューズ、情報通信研究機構、LINE)により開発が行われている。
※2 高度自然言語処理プラットフォーム:アビームコンサルティング株式会社が総務省の委託事業である「IoT/BD/AI 情報通信プラットフォーム社会実装推進事業 課題 I 最先端の自然言語処理技術を活用した高度自然言語処理プラットフォームの研究開発」の受託を受けて、平成29年度より研究開発を進めているSNSの自然言語情報をリアルタイムで集約、解析、整理するシステム。 - 2.災害対応訓練の内容
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訓練は、梅雨前線停滞下において発生した大型で非常に強い台風による浸水をはじめとする風水害や土砂災害を想定して行われ、住民役の県下11市担当者が県災害対策本部以外の場所で実際に LINEを立ち上げ、防災チャットボットを通じた災害情報の投稿を実施した。投稿された災害情報は高度自然言語処理プラットフォームを通じて県災害対策本部情報班が確認し、災害対応への活用を検証した。
なお、防災チャットボット防災訓練の参加市町村は、今回の訓練にあたり県が呼びかけ、これに応じた石岡市,下妻市,常陸太田市,北茨城市,つくば市,筑西市,坂東市,稲敷市,鉾田市,つくばみらい市,小美玉市の 11市が訓練に参加した。
- 令和元年度茨城県風水害対応訓練は,午前8時30分に災害警戒本部を設置,災害対策本部事務局員のうち総括班・情報班及び対策班の要員は災害対策室に参集が完了した状態で午前9時より行われた。茨城県は,災害に関する情報収集・伝達・分析,応急災害対策の検討,関係機関等との連絡調整のため,災害警戒本部を設置し,災害対策本部事務局員のうち総括班・情報班及び対策班の各班員を参集した。
- 参集された総括班,情報班及び対策班の各班員は、当該時点までの気象・河川情報、交通機関、市町村及び関係機関等の状況について確認済みである前提で、特に情報班が市町村担当者により防災チャットボットを通じて投稿された災害情報や他の SNS 経由の情報を整理集約された画面(高度自然言語処理プラットフォーム)を見ながら災害対策本部会議における報告資料に記載すべき事象を収集・選別した。
- 3.防災チャットボットの訓練での活用
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7月5日(金)、茨城県において120人の職員が参加した「令和元年度茨城県風水害対応訓練」(台風による浸水ならびに土砂災害を想定)において、防災チャットボットに投稿される情報に加え、基盤的防災情報共有ネットワーク SIP4D や Twitter など他の情報ソースから得られる被害(予測)情報に基づいた初動判断及び意思決定のための情報集約訓練を実施した。また、防災チャットボットを利用した訓練としては今回初めて、県が収集した市町村の避難勧告等の情報や警戒情報等の提供を、実際に当該エリアにいると想定される住民役の市町村職員のスマートフォンに対して、防災チャットボットを通じたプッシュ通知により実施した。訓練の結果、住民から直接情報を収集し、市町村に確認を促すなど、県の情報収集・確認作業を主体的にコントロールできる可能性があることが確認できた。
防災チャットボットを用いた訓練の概要以上
令和元年度茨城県風水害対応訓練における
防災チャットボットの活用(写真 スクリーンショット)





2.本件配布先
文部科学記者会、科学記者会、筑波研究学園都市記者会