報道発表
自然の断層に近いサイズで地震を再現!
〜世界最大規模の巨大岩石摩擦実験〜
2023年9月4日
国立研究開発法人防災科学技術研究所
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長: 寶 馨)は、世界最大規模となる巨大岩石摩擦試験機を新たに開発しました。今後、本試験機を用いて自然に近いサイズの地震の再現実験を行い、地震の発生・連鎖メカニズムの解明と、それに基づく地震・津波被害の軽減に貢献します。9月12日(火)に本試験機を用いて行う初の実験は、報道機関を対象に公開で実施いたします。
- 1.日時
-
2023年9月12日(火)
13:30 受付開始(14:00受付締切)
14:00 実験についての説明(第一セミナー室)
14:40 公開実験開始(15:00実験終了)
※公開実験の時間は、予定のため変更となる場合もございます。 - 2.場所
-
国立研究開発法人防災科学技術研究所 つくば本所
〒305-0006 茨城県つくば市天王台3-1 - 3.対象
-
報道機関
- 4.内容
-
別紙資料による。
- 5.実験主体
-
国立研究開発法人防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門
主任研究員 山下 太
招へい研究員 福山 英一
特別研究員 大久保 蔵馬
特別研究員 前田 純伶
(別紙資料)自然の断層に近いサイズで地震を再現! 〜世界最大規模の巨大岩石摩擦実験〜
- 1.実験の経緯
-
地震の正体は断層が食い違いすべる自然現象です。その発生に伴い地震波(揺れ)が放出されるほか、海底で発生した場合には津波を引き起こすこともあり、それらが甚大な被害をもたらします。これらの被害を軽減するには、将来どのような地震が起こりうるかを精度良く予測することが重要であり、そのためには断層がどのようにすべるのかを知る必要があります。断層のすべり方を左右する重要な要素が岩石の摩擦の性質です。岩石摩擦に関する情報を観測から得ることは極めて困難であることから、従来、岩石同士を擦り合わせる、すなわち地震を再現する室内実験により摩擦の性質が調べられ、その情報が予測に役立てられてきました。ただし、近年の研究により、実験で使用する岩石サンプルのサイズに応じて摩擦の性質が変化する可能性が指摘されています。したがって、地震の発生を精度良く予測するために、岩石サンプルのサイズが摩擦の性質に与える影響を明らかにし、実験室サイズのサンプルで調べた摩擦の性質を実大サイズの断層に適用するための法則を見つけ出す必要があります。また、南海トラフのような広大な断層では、その一部がすべって地震が発生した後、時間をおいて残りの断層がすべるという連鎖的な地震発生がこれまでにも起きており、被害軽減のための対策立案を難しくしています。従来の摩擦実験では岩石サンプルが小さいため、断層全体が一度にすべってしまう地震しか再現できず、どのように地震が連鎖するのかを調べることができませんでした。そこで国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下「防災科研」という。)は、これらの問題解決に向け、現存する試験機に比べはるかに大きな巨大岩石摩擦試験機を新たに開発しました。
- 2.試験機の概要
-
今回新たに開発した巨大岩石摩擦試験機の全景を写真1に、概要を図1に示します。実験では2本の直方形岩石サンプルを使用し、長さが7.5m、幅が0.5mの岩石サンプルの上に長さが6mで幅が同じサンプルを積み重ねます。これは接触面(模擬断層面)の長さ、面積共に世界最大規模となるものです。積み重ねたサンプルを試験機フレーム内に収め、上側サンプルの上から6本の油圧ジャッキ(垂直載荷ジャッキ)を用いて載荷し接触面に圧力を加えます。最大荷重は1本のジャッキあたり約200tf(トンフォース)、計1200tfです。その後、試験機フレーム左下に設置したせん断載荷ジャッキにより下側サンプル側面を左側から載荷します。下側サンプルは低摩擦ローラー上に設置されているため、せん断載荷ジャッキによって与えられた荷重は接触面のみが支えることになります。せん断載荷ジャッキが与える荷重が増加し、接触面の摩擦強度を超えると上下サンプルの境界がずれてすべり、地震が発生します。せん断載荷ジャッキの動きは0.01mm毎秒から1mm毎秒の間で自由に設定可能であり、最大荷重は垂直載荷ジャッキの総荷重と同じ約1200tfです。また、最大で1mの総すべり量を実現できます。
防災科研は2011年から10年以上にわたり、接触面の長さが1.5 mの大型岩石摩擦実験に取り組み、岩石摩擦に関するさまざまな研究成果および実験データを蓄積してきました。今後は新たに開発した巨大試験機を用いて実験研究を進めつつ、これまでに得られた知見と組み合わせることで、より現実に即した断層すべり法則を明らかにしていくとともに、その知見を導入した巨大地震の発生・連鎖シナリオ構築を推進してまいります。
※9月12日(火)に行う公開実験は、本試験機を用いて行う初の実験です。写真1 巨大岩石摩擦試験機の外観図1 巨大岩石摩擦試験機の概要図