報道発表
半日先までの積乱雲危険度予測情報の開発開始
~内閣府「研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム(BRIDGE)」の施策の一つとして産学連携で実施~
2023年10月6日
国立研究開発法人防災科学技術研究所
I-レジリエンス株式会社
株式会社中電シーティーアイ
一般社団法人九州経済連合会
一般社団法人九州半導体・デジタルイノベーション協議会
国立研究開発法人防災科学技術研究所、Ⅰ-レジリエンス株式会社および株式会社中電シーティーアイは、一般社団法人九州経済連合会、一般社団法人九州半導体・デジタルイノベーション協議会と連携し、減災行動に結び付く積乱雲危険度予測情報(半日先までの予測)を提供するために必要な研究開発・実証実験を実施します。
1.内容(詳細は、別紙資料による。)
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:寶 馨、以下「防災科研」という。)、Ⅰ-レジリエンス株式会社(代表取締役社長:小林 誠、以下「Ⅰ-レジリエンス」という。)および株式会社中電シーティーアイ(代表取締役:三澤 太輔、以下「中電CTI」という。)は、一般社団法人九州経済連合会(会長:倉富 純男、以下「九経連」という。)および一般社団法人九州半導体・デジタルイノベーション協議会(会長:山口 宜洋、以下「SIIQ(シーク)」という。)と連携し、減災行動に結び付く積乱雲危険度予測情報(半日先までの予測)を提供するために必要な研究開発・実証実験を実施します。
本取組は、内閣府「研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム(BRIDGE)」の施策の一つとして、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」における「線状降水帯観測・予測システム開発」の成果である積乱雲群予測と、防災科研が開発した落雷・突風等予測を統合し、産業界からのニーズを踏まえ、企業の事業継続や住民の安全確保に資するため、拠点等にピンポイントで半日先までの積乱雲ハザード予測情報を開発します。さらに、これを基に積乱雲危険度予測手法の高度化と精度向上を進め、積乱雲危険度予測情報配信の実証実験を実施し、九州地方の積乱雲危険度予測情報のリアルタイム配信を実施します。
別紙資料
- 1.背景等
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近年、積乱雲マルチハザード(線状降水帯も含め積乱雲によってもたらされる豪雨や落雷等のさまざまなハザードを指す)が頻繁に発生し、人的被害や年間2,000億円以上と推定される経済被害が発生するなど甚大な被害をもたらしています。国民の生命を守るとともに、企業活動による経済被害の低減への対策も必要であり、具体的な例として、経済安全保障の観点から生産拠点招致を目指す半導体工場運用事業者では、瞬停リスクに対して雷予測は半日前から2時間前までのシームレスな予測が有効との声があり、時間とともに危険範囲を絞り込んでいく落雷予測情報やそれに基づく事業継続の判断に資する情報が必要です。
内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」において線状降水帯予測のために開発した、水蒸気観測に基づく線状降水帯を構成する激しい積乱雲群の2時間先予測および水蒸気観測データ同化手法は、豪雨、落雷、突風予測の信頼性確保においても重要性が高いものです。また、第2期SIPにおいて線状降水帯予測のために開発した積乱雲群の半日先予測も事業継続の可能性の早期検討においても重要性が高いものです。
積乱雲危険度予測情報を研究開発し実装することは、レジリエントな社会の実現に重要であるものの、積乱雲予測をハザードリスク情報として提供し、多様な企業で活用していただくためには、積乱雲予測技術のさらなる高度化と有効性の実証が必要な状況です。図1 積乱雲マルチハザードの状況 - 2.実施内容
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防災科研、Ⅰ-レジリエンスおよび中電CTIからなる研究グループは、内閣府「研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム(BRIDGE)」※1の施策に採択され、九経連等と連携し、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」における「線状降水帯観測・予測システム開発」の成果である積乱雲群予測と、防災科研が開発した落雷・突風等予測を統合し、産業界からのニーズを踏まえ、企業の事業継続や住民の安全確保に資するため、拠点等にピンポイントで半日先までの積乱雲ハザード予測情報を開発します。さらに、これを基に積乱雲危険度予測手法の高度化と精度向上を進め、積乱雲危険度予測情報配信の実証実験を実施し、九州地方の積乱雲危険度予測情報のリアルタイム配信を実施します。
本取組で得られる気象センシング情報は、SIP第3期「スマート防災ネットワークの構築」のサブ課題A「災害情報の広域かつ瞬時把握・共有」に提供します。図2 「積乱雲危険度予測情報の研究開発と社会実装モデルの展開」の全体像さらに、九経連、Ⅰ-レジリエンスを含む5社がコアメンバーとなって本年8月に設立した「九州防災DXタスクフォース」※2の取組とも協調することにより、本取組の加速を図っていきます。
- 3.各者の役割
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- ・防災科研
- 半日先までの積乱雲ハザード予測技術の高度化
- ・I-レジリエンス
- 積乱雲危険度予測情報の高度化に向けたニーズ調査と実証実験
- ・中電CTI
- 積乱雲確率危険度予測情報の高度化
- ・九経連・SIIQ
- 落雷危険度予測情報に対するニーズ収集
実証実験実施のための各種協力(実証フィールド設定に関する調整等)
- 4.期待される効果
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積乱雲危険度予測情報配信の研究開発・検証・実証実験を行うことで、BRIDGE後においてスタートアップが事業化し、システム運用と配信サービスによる新たな市場の創出・社会実装を目指していきます。
これらによって、頻発する積乱雲マルチハザードによる人的被害や年間2,000億円以上と推定される経済被害等の低減・防止に貢献していきます。
- 用語解説
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※1 内閣府「研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム(BRIDGE)」
統合イノベーション戦略等の科学技術・イノベーション政策の方針に基づき、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が各省庁の研究開発等の施策のイノベーション化(SIPや各省庁の研究開発等の施策で開発された革新技術等を社会課題解決や新事業創出に橋渡しするための取組をいう)につなげるための「重点課題」を設定し、研究開発だけでなく社会課題解決等に向けた取組を推進するプログラム。
【内閣府】研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム(BRIDGE)
※2 九州防災DXタスクフォース
九州地方知事会と経済界代表で構成する九州地域戦略会議にて策定された第2期九州創生アクションプラン[JEWELS+(プラス)]の「安心・安全PT」内で防災・減災プロジェクトに携わる民間チームとして本年8月に設立。防災DXを通じ、災害対策の高度化支援、防災対策サービスの官民共創、広域連携の仕組み作りを行い、九州に暮らす・関わる人々と産業の災害に対する安全保障対策強化に貢献する。コアメンバーは九経連、東京海上日動火災保険株式会社、I-レジリエンス、SAPジャパン株式会社、株式会社INSPIRATION PLUSの5社。
【I-レジリエンス】「九州防災DXタスクフォース」設立とその取組内容について(PDF411KB)