報道発表
令和6年能登半島地震を対象とした自治体の災害対応および応援受援活動の全国調査の実施
2024年8月29日
国立研究開発法人防災科学技術研究所
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:寶 馨、以下「防災科研」という。)は、わが国の災害対応の継続的な改善と、地域社会のレジリエンス向上を目的に、今年1月に発生した令和6年能登半島地震における自治体の災害対応および応援受援活動に関する体系的なデータを取得し共有する全国調査を実施します。
1.ポイント
- 防災科研では、今年1月に発生した令和6年能登半島地震を対象として、災害対応と応援受援に関する全国的な調査を実施します。
- 自治体の災害対応に関する全国共通的かつ継続的な調査はこれまで存在しておらず、この調査は、わが国を代表する災害対応の研究者らによって構成された有識者委員会と関係学会の後援を得て実施する、初の全国的な調査です。
- 本調査は、今後、大災害が発生した場合にも共通的な項目等で継続して実施し、自治体の災害対応および応援受援活動に関する体系的なデータを取得するとともに、研究や政策形成目的での利用に対して公開します。
令和6年能登半島地震を対象とした自治体の災害対応および応援受援活動の全国調査について
- 1.はじめに
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防災科学技術研究所は、災害過程の科学的解明による持続的なレジリエンス向上方策に関する研究開発を行っています。この度、わが国を代表する災害研究者等で組織された有識者委員会を設置し、学会等の後援を得ながら、今年1月に発生した令和6年能登半島地震における自治体の災害対応および応援受援活動に関する体系的なデータを取得し共有する全国調査を実施します。本調査を通じて、わが国の災害対応の継続的な改善と、地域社会のレジリエンス向上を目指します。
- 2.背景と目的
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市町村をはじめとする自治体は、わが国の災害対応を一義的に担う存在です。しかしながら、大規模災害が発生すると、被災した地域の行政事務は膨大となり、自治体の行政能力が大きく損なわれます。このため、平成23年の東日本大震災、平成28年の熊本地震、令和元年の東日本台風など、大規模災害が発生するたびに全国規模で職員の応援受援活動が行われてきました。近い将来に発生が懸念されている首都直下地震や南海トラフ地震のような国難とされる災害においては、こうした活動の重要性はますます高まると予想されます。
一方で、被災した自治体の災害対応の実態や、応援受援活動の実態については、それぞれの団体でとりまとめる報告書や、業務・分野別の報告が多く、その全体像は十分には明らかになってはおりません。学術研究においても、特定の地域や災害に焦点を当てて掘り下げたものはありますが、過去の災害対応と比べて何がどれだけ改善されたのか、どのような課題が明らかになったのかを検証するための体系的データは不足しています。また、令和6年能登半島地震は、半島部の被災ということで、災害対応にも数々の固有の問題を引き起こした可能性があると考えられます。
このような状況を踏まえ、防災科研では、継続的に災害対応に関するデータを収集・分析し、今後の大規模災害に向けた課題を明らかにすること、ならびに災害対応に関わる実務家・研究者らに対して議論や研究のための体系的データを提供することを目的として、全国調査を実施することといたしました。本調査を通じて、わが国の災害対応の継続的な改善と、地域社会のレジリエンス向上を目指します。
本調査は、今後、大災害が発生した場合にも継続して実施し、自治体の災害対応および応援受援活動に関する体系的なデータを取得するとともに、研究や政策形成目的での利用に対して公開します。 - 3.調査の概要
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- (1)全国応援受援団体ならびに応援派遣職員へのアンケート調査
- 全国の団体(都道府県、政令市、市区町村)を対象に、第1次調査として①団体アンケート調査を実施し、団体としての応援活動の有無・概要(実施時期、派遣職員数、担当業務等)を把握する(郵送依頼、Web回答)。団体アンケート調査での調査項目は、客観的な数値や事実関係等を基本とする。また、応援団体については、第2次調査となる派遣職員への調査協力の可否を尋ねる。
第2次調査として、派遣職員への調査協力の得られた団体を対象に、②職員アンケート調査を実施し、派遣職員個人の応援活動内容を把握するとともに、課題や要改善点等に関する認識を取得する。(メール依頼、Web回答) - (2)応援団体によるマネジメント支援等のヒアリング調査
- 被害規模等の大きい市町村において、①全庁的なマネジメント支援を行った応援団体の職員および②主要業務(避難所運営、被害認定調査等)のマネジメント支援を行った職員の対象にヒアリング調査を実施する(主にオンライン)。受援団体および応援団体間でのマネジメント調整について、実施項目や方法、課題や今後の改善策などを調査整理する。
調査対象は、総務省の応援職員派遣制度(短期派遣)での全庁運営および個別業務のマネジメント支援派遣職員を主な対象としつつ、総務省制度対象以外の個別業務分野(例:環境廃棄物)のマネジメント支援派遣職員も一部対象とする。 - (3)被災団体における受援調整等のヒアリング調査
- 被害規模等の大きい市町村における、①防災部署の幹部職員による全庁マネジメント(受援調整を含む)、②主要業務の管理職による当該業務のマネジメント(受援調整を含む)、③首長によるトップマネジメントを対象に、ヒアリング調査を実施する(主に訪問)。調査項目庁内および応援団体とのマネジメント調整について、実施項目や方法など調査整理する。
- (4)調査実施期間
- 2024年9月〜2024年12月
- (5)研究成果について
- ・研究成果報告会を2024年12月20日(金)に都内にて実施する。(詳細は別途案内)
- ・防災科学技術研究所刊行物「災害調査」において研究成果を発表する。
- ・収集したデータは研究や政策目的の利用に対して公開する。