お知らせ
大型降雨実験施設の機能強化について
~国内最大級の暴風雨環境を再現~
2025年5月29日
国立研究開発法人防災科学技術研究所
国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:寶 馨)は、自然の降雨状態を再現する装置としては世界最大級の大型降雨実験施設に、毎秒20mを上回る強風を人工的に発生させる機能を新たに追加しました。これにより、従来のゲリラ豪雨の実験に加え、台風レベルの強風下での風雨の挙動や影響の再現が可能となり、現実に即したさまざまな気象環境での実験が可能となります。
1.内容
国立研究開発法人防災科学技術研究所(以下「防災科研」という。) は、豪雨を原因とする自然災害の防止・軽減を目的として1974年より大型降雨実験施設の運用を開始しました。2013年度には、局地的に大雨をもたらすゲリラ豪雨に対する社会的な関心の高まりに対応するために、降雨強度を1時間に300mmまで再現できるように機能強化を図りました。
近年、災害・緊急時における自律制御ドローンや自動運転車の活用が期待されています。当実験施設においても、豪雨環境下でのドローン機体の制御実験や関連するさまざまなセンサー機器の性能実験が増加しており、利用者からは、雨だけではなく自然に近い雨と風の両方の環境条件でドローンやセンサーの試験を要望する声が高まっていました。この度、大型降雨実験施設内に最大風速毎秒20mを上回る強風を人工的に発生させる強風装置を設置し、台風レベルの風と雨の環境を再現できる暴風雨環境の機能を追加しました。
今後、この機能強化により、民間企業等と協働して従来の豪雨災害のための実験に加え、暴風雨環境下でも稼働が可能なドローンや自律走行が可能な車の実現などに寄与することが期待されます。
大型降雨実験施設の機能強化について
- ■大型降雨実験施設
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防災科研が保有する大型降雨実験施設は、豪雨を原因とする自然災害の防止・軽減を目的として1974年に運用が開始されました。自然の降雨状態を再現する降雨装置としては世界最大級の規模です。この大型降雨実験施設を利用して、大型模型斜面を用いた土砂災害軽減研究、土砂浸食に関する研究、降雨中のレーザーレーダの減衰機構の研究など、基礎から応用まで幅広い研究が進められています。施設は、5つの実験区画と移動降雨装置、ポンプ制御棟、貯水槽から構成されています。2013年度に改修工事を行い、現在は散水面積 44m×72m、降雨強度は1時間に15~300mm、雨滴粒径0.1から6mm、雨滴落下高16mの規模・能力を有しています。
- ■暴風装置
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最大風速毎秒20mを上回る風を吹かせることが可能な装置です。装置内に大型送風機を4機設置し、幅3m、高さ3mの範囲に集中させることで、台風レベルの暴風が可能となり、さらに降雨装置を同時に稼働させることで、暴風雨環境の再現が可能になります。
- 可能な風速:1m/s〜25m/s
- 最大風速範囲:風口3m×高さ3m
- 安全を確認した範囲でドローンの飛行や車の走行が可能
- ■暴風雨環境の再現
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以上の設備を合わせて、豪雨(1時間300mm)と暴風(風速20m/s以上)を合わせて、よりリアルな暴風雨環境を再現することが可能になり、ドローン、車等の制御やセンサー性能の暴風雨条件での検証試験に実施などに利用されることが期待されます。
