地震津波の即時的逐次的評価に関する技術開発
観測データを地震津波防災に活かす
第4期中長期計画(2016年度~2022年度)の「地震・津波予測技術の戦略的高度化研究プロジェクト」では、観測データを活用した地震の「揺れ」からの「揺れ」の予測、津波の即時予測、多様な地殻活動の常時モニタリング等の研究開発で大きな成果をあげ、2011年3月に発生した東日本大震災で浮き彫りになった地震と津波の防災に関する様々な課題の克服と長期評価に貢献しました。
時間的に切れ目なくつなぐ「逐次」に注目
第5期中長期計画(2023年度~2029年度)では、第4期に進展した「即時」と「常時」モニタリングに加えて、両者を時間的に切れ目なくつなぐ「逐次」に着目し、地震と津波に対する予測力の向上、さらには被害低減のための予防力向上に繋げる研究開発に取り組みます。
防災科研では、日本全国の陸域・海域を対象に七つの観測網を展開し、陸海統合地震津波火山観測網MOWLAS(モウラス)として統合運用しており、現在、構築が進む南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)もこれに加わる予定です。得られた観測データについて、大地震発生直後から分析及び評価し、発生した地震の震源情報、地震動や津波の特徴・経過を即時的かつ時間的な切れ目を生じさせず逐次的に把握及び推定するための技術開発を行います。また、即時的かつ逐次的に把握・推定された情報を過去の地震や津波の情報及び事前想定と有機的に結びつけ、リアルタイムに提供するための手法の研究開発を行います。特に海域においては、南海トラフ全域のような震源域が広範囲に及ぶ巨大地震でも適用可能な手法の研究開発を行い、被害状況の予測や災害時の判断に役立つ情報を創出します。そのために、様々な現況モニタリング技術及び関連する数値シミュレーション技術の高度化のための研究開発を進めます。また、MOWLAS 等が捉える地震や津波以外の事象による信号の検知とその原因究明を行う技術の開発を通じ、地震及び津波現象のモニタリング精度向上並びに様々な自然災害等の評価に貢献します。これらの成果を集約し、サイバー空間で相互参照可能な統合データベースの構築を進めます。
得られた成果は、ウェブサイト等により広く情報公開を行うとともに、大地震発生前、発生時、発生後における観測及び予測情報を所内外の関係機関と共有・連携します。そうすることで、地震津波災害のオールフェイズの対応に貢献する情報プロダクツを提供・発信し、社会のレジリエンス向上に貢献します。