自然災害のハザード・リスクに関する研究開発
将来の災害を予測し、備えるために
社会全体のレジリエンスを持続的に高め、災害リスクを低減するためには、社会を構成する国、地方公共団体、企業、地域、個人等の各主体がリスクを適切に把握して備えなくてはなりません。本プロジェクトでは、災害に対して適切な意思決定ができる社会の実現に向け、自然や社会環境に関するデータを活用した科学的知見に基づく自然災害のハザード・リスク評価に関する総合的な研究に取り組みます。ここで、ハザードとは、地震動や津波といった脅威となりうる現象に見舞われる危険性のこと、リスクとは、社会がハザードに曝されることによる被害の受けやすさのことを指します。
地震や津波のハザード・リスク評価研究
過去に経験したことのない大規模災害に対する不確実さを考慮したハザード・リスク評価手法の開発を行い、地震及び津波ハザードの基盤情報を整備します。さらに、地震に伴う複合災害(例えば、土砂災害や液状化等)のリスク評価手法の開発を行います。また、これらの研究開発に必要な強震動観測記録、地下構造、活断層などのデータベース群の整備、及びシミュレーション技術の開発も進めます。研究開発成果を所内外へ発信し、活用を促進するハザード・リスク情報プラットフォームを開発します。また、研究開発成果に基づき文部科学省の地震調査研究推進本部をはじめとする防災行政、地域や企業の防災対策等に役立つ情報を整備します。
マルチハザード・リスク評価研究
地震や津波だけではなく、その他の自然災害も対象に、日本全国の歴史時代から現在までの災害事例をデータベース化したマルチハザードイベントカタログや地すべり地形分布図等に基づき、様々なシミュレーション技術を活用することで、地域性や発生の多様性を考慮したマルチハザード・リスク評価手法の開発に取り組みます。また、全体を俯瞰するような被害予測とそれに基づく経済被害の評価手法と社会全体の機能維持・回復を評価できるレジリエンスの定量評価手法の開発を行うとともに、評価に必要な建物や人口等の社会環境に関する基盤的なデータを整備します。
即時被害推定・状況把握研究
地震発生直後の全国を対象としたリアルタイム地震被害推定システムを基盤的なシステムとして、地方公共団体や企業等の各主体の災害対応の意思決定に役立てられるようなニーズを踏まえ、航空機やドローン等によるセンシング技術を活用して被害推定の空間分解能を高め、広域から重要施設等の個別の建物レベルにわたる被害推定を可能にするシステムを、その他のシステムと連携する形で開発に取り組みます。
研究成果の国際的な展開
研究開発成果の国際展開のため、国際研究交流を促進し、観測記録をはじめとしたデータやハザード・リスク評価に係るモデルの共有・相互理解を進めます。国際的なNPO 法人であるGlobal Earthquake Model(GEM)の活動等を通じて、国際的なハザード・リスク評価モデルの標準化に向けて取り組むとともに、「仙台防災枠組2015-2030」の目標を踏まえて日本国内はもちろん、国際社会の防災減災にも貢献します。