風水害の軽減に向けた観測・予測技術に関する研究開発
極端気象に対するレジリエンスを強化
最近の気候変動の研究によると、将来、大雨の発生頻度が増加する可能性が高いと評価されています。実際に、近年、短時間大雨の発生頻度は増加しており、浸水や土砂災害等の被害も激甚化・頻発化しています。このような状況の中で、大雨のような極端気象に対する社会のレジリエンスを強化していくためには、極端気象や風水害に関する観測技術・予測技術の高度化を行うと共に、その成果を利用して災害対応の最適化につながる情報プロダクツを生成することが必要です。本研究プロジェクトでは、そのような情報プロダクツの生成・利活用により風水害を軽減させる研究を実施します。
危険な積乱雲の検知・追跡・予測
大きな被害を発生させる線状降水帯や局地的な大雨、竜巻、降ひょう、落雷といった極端気象は、発達した積乱雲に伴って発生します。ひとつの積乱雲は大きさが数キロメートル程度、その寿命が1 時間程度であるため、通常行われている天気予報では積乱雲とそれに伴う極端気象の発生位置・時刻を予測することができません。積乱雲を予測するためには、その発生の予兆を捉えることができる観測と、積乱雲を解像できる数値気象シミュレーション、観測データを適切にシミュレーションへ入力できるデータ同化技術が必要です。防災科研では、これまでの研究により積乱雲へと発達する前段階の雲(積雲)を検知する技術(雲レーダー)、雲スケールの観測データを気象シミュレーションへ同化する技術等の開発を実施してきました。本研究ではこれらの技術に加え、落雷以外の雷放電も検知可能な観測技術や気象シミュレーションの高度化を通して、より高度な気象予測情報を生成する研究を実施します。
浸水被害・土砂災害軽減のための情報プロダクツ作成
本研究により生成される降雨予測情報等から、確率的手法を用いて水害危険流域を抽出し、効率的かつ高精度に浸水災害危険度を推定する手法を開発します。この手法を用いることにより、被害状況の把握や、発災直後の復旧活動時及び平時の取り組みに役立つ浸水災害リスクトリアージシステムを構築します。
また、土砂災害に関しては、現状、災害対応職員等の行動を支援するための情報が不足しています。本研究では、大型降雨実験施設を利用した実験や現地観測を行い、斜面崩壊の前兆現象を効果的かつ早期に検知できる観測技術を高度化することにより、災害対応を支援する情報を作成します。さらに、衛星データ等を用いて、広域に発生する土砂移動の発生場所及び規模に関わる情報を早期に作成する技術を開発します。