観測・予測技術の高度化による雪氷災害レジリエンス向上研究
安全で快適な冬の生活を目指して
雪氷災害を取り巻く現状
気候変動に伴う極端気象現象が増加し、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)などに起因する集中豪雪が多発するなど、頻発化・激甚化する雪氷災害が社会活動に及ぼす影響は近年深刻な問題となっています。また豪雪地以外でも、南岸低気圧性降雪などによる突発的な降雪により、少ない雪でも混乱が起こるなど、都市社会の雪への脆弱性が浮き彫りになっています。
しかし雪氷災害対策は、地域・組織ごとに課題や対応が異なるために、対策の成功事例の横展開が難しく、標準的な災害対策・対応手法が未だ確立されていません。さらに財政不足、過疎高齢化、除雪作業の担い手不足といった深刻な課題など、雪国の自治体を取り巻く状況は厳しいものがあります。
このような問題を解決するためには、科学的知見に基づき標準化された効果的・効率的な雪氷災害対策によりレジリエンスを高めることが重要であり、それに基づき気候変動に伴って激甚化する雪氷災害によるリスクの低減や気候変動への適応を進めることが求められています。
研究内容
本プロジェクトでは、このような問題意識のもとで、以下の2つのサブテーマを推進します(図)。
1つ目のサブテーマは、「センシングとシミュレーションの融合による総合的雪氷災害リスク情報の創出研究」です。このテーマでは、これまで培ってきた観測・予測技術や雪氷防災実験施設等の実験・計測環境の強みを活かし、雪氷災害に関連する現象をセンシング・シミュレーションする技術の高度化を実施します。さらに、センシング技術とシミュレーション技術を高度に連動させることで、多様な雪氷災害種別やそれらによる被害に対応可能な総合的な雪氷災害ハザード・リスク評価技術を確立します。また、これまで考慮されていなかった社会的脆弱性の影響も統合することで、具体的な施策の根拠となるハザード・リスク情報を創出する技術開発を行います。
2つ目のサブテーマは、「雪氷災害情報の活用方法と対策手法の標準化に関する研究」です。このテーマでは、国・地方公共団体・民間企業などのステークホルダーと共創しながら、研究で生成される情報プロダクツの試験配信の実施やその情報を活用した効果的かつ効率的な雪氷災害対応手法の体系化・標準化を目指します。
これらの研究を通じて、わが国全体の冬期における、将来にわたり持続可能な安全で快適な生活の実現を目指します。